JERA「次世代CO2回収」技術の検証開始へ、 「脱炭素化困難」なガス火力に焦点

村山 大翔

村山 大翔

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大手電力会社JERAは、米国Newlab New Orleans(NLNO)と連携し、発電所から排出される低濃度CO2回収技術の商用化に向けた戦略的提携を開始した。これは、二酸化炭素(CO2)濃度が低く、従来の技術ではコストとエネルギー消費が課題となっていたコンバインドサイクルガスタービン(CCGT)施設からの排出削減を狙うもので、日本の電力大手によるカーボン除去(CDR)技術の実用化を加速させる動きとして注目される。

JERAとNLNO、「次世代キャプチャー」でCO2クレジット創出を模索

日本最大の発電事業者であるJERAは、コーポレートベンチャーキャピタルのJERA Venturesを通じ、グローバル・ベンチャー・プラットフォームであるNewlabがルイジアナ州ニューオーリンズ市に設立したNLNOと基本契約を締結した。この提携の核心は、電力部門で最も脱炭素化が困難とされる課題の一つ、すなわち、CCGT施設から排出される低濃度CO2の回収を可能にする次世代型CO2回収技術の検証と商業展開にある。

米ガルフ・コースト地域では、先進製造業やデータセンターといったエネルギー多消費産業からの電力需要が急増しており、排出削減目標達成と産業競争力の維持を両立させるための信頼性の高い低炭素電源が喫緊の課題となっている。

両者は、この課題に対し、先進的な溶剤、固体吸着剤、膜分離、およびハイブリッドシステムといった新しいCO2回収技術に焦点を当てる。これらの技術は、既存のアプローチを超えるエネルギー効率、耐久性、コストパフォーマンスの改善を目指している。

実証プロジェクトは2026年中に選定、日本への技術移転も視野

NLNOが持つ産官連携のプラットフォームを活用し、スタートアップ企業は実際の産業環境下で排ガスを用いた試験を実施する機会を得る。これにより、パイロット検証段階から商業展開への移行を加速させる狙いがある。JERAとNLNOは、2026年中をめどに次世代CO2回収ソリューションを持つスタートアップ企業を選定し、実証規模のプロジェクトに適したCCGT施設を特定する。

JERAは「JERAゼロエミッション2050」を掲げ、2050年までの国内外の事業からのCO2排出実質ゼロを目指しており、この提携はゼロエミッション火力開発の一環に位置づけられる。将来的には、これらの次世代CO2回収ソリューションをガス火力発電所に導入し、回収したCO2をカーボンクレジット創出や、炭素回収・貯留(CCS)などへ活用することで、エネルギー安定供給と脱炭素化への貢献を目指す方針だ。

JERAはルイジアナ州において、世界最大級の低炭素アンモニア施設の開発、300メガワット(MW)のOxbow太陽光発電所の保有、シェールガス田への上流投資など、既に広範な事業を展開している。今回の提携は、同社のグローバル戦略を強化し、炭素除去(CDR)技術の商業化を支援する具体的な一歩となる。

参考:https://www.jera.co.jp/news/information/20251203_2322