ジャマイカ、都市部の気候適応に「自然を活かす解決策」導入へ カナダ支援で5年間の環境プロジェクト始動

村山 大翔

村山 大翔

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ジャマイカ政府は10月23日、都市部の気候変動リスクと社会課題に対応するため、自然に基づく解決策(NbS)を都市開発に統合する5年間のプロジェクト「ジャマイカ・アーバン・ソリューションズ・フォー・ジ・エンバイロンメント(J-USE)」を正式に開始した。

同事業はカナダ政府(グローバル・アフェアーズ・カナダ)が400万カナダドル(約4億4,400万円)を拠出し、現地の環境基金団体エンバイロンメンタル・ファウンデーション・オブ・ジャマイカ(EFJ)が追加で120万カナダドル(約1億3,300万円)を支援する。プロジェクトでは、都市の気候適応力を高めるとともに、炭素吸収源の創出などによって温室効果ガス削減効果をもたらすことが期待されている。

自然を「インフラ」として活用

J-USEは、都市部における緑地・水域の再生を通じて、気温上昇の緩和、洪水リスクの軽減、生物多様性の保全を同時に実現することを目的とする。首都キングストンでは、コンスタント・スプリング通りの「アビリティーズ財団」、パピン地区の「ダニー・ウィリアムズ聾学校」、そしてトーリントン橋周辺をパイロット拠点として整備を進める。

水・環境・気候変動相マシュー・サムーダ氏は、キングストンのジャマイカ・ペガサス・ホテルで行われた発足式で「インフラ整備だけでは気候変動への適応は不十分だ。自然を基盤としたアプローチこそが、都市の持続可能性を支える」と述べ、プロジェクトを高く評価した。

また同氏は、ジャマイカ全域のインフラの気候リスクを把握する「ジャマイカ・システミック・リスク評価ツール(J-SRAT)」を活用し、脆弱地域に優先的に取り組みを展開する考えを示した。「国全体で5億ドル(約760億円)以上を要すると見込む国家適応計画の中で、今回の事業は現実的な一歩だ」と述べた。

カナダ、「持続的な資金メカニズム」を重視

カナダのマーク・バーマン駐ジャマイカ高等弁務官は、「このJ-USEは、気候変動への適応と社会的包摂を両立する両国の共通ビジョンを体現している」と語った。

さらに、「単発的な支援ではなく、官民資金を呼び込む『都市環境ソリューション基金』を創設することで、直接投資後もプロジェクトが持続する仕組みを構築する」と説明した。この基金は、カナダ政府が表明している53億カナダドル(約5,900億円)の気候資金コミットメントの一環で、小島嶼開発途上国の気候レジリエンス支援を目的としている。

都市型CDRへの応用可能性も

プロジェクトマネージャーのジョニ・ジャクソン氏によると、J-USEは以下の三本柱で構成される。

  1. 持続可能な資金調達メカニズムの構築、
  2. 自然を活かした解決策を政策や法制度に組み込むための政策提言、
  3. ジェンダー平等と社会包摂を重視した都市型NbSの実装。

特に(3)では、植樹や緑地再生を通じた炭素吸収やヒートアイランド緩和など、都市部における炭素除去(CDR)機能の強化が期待される。EFJは今後、キングストンを含む7県(ウェストモアランド、ハノーバー、セントキャサリン、クラレンドン、セントトマス、キングストン&セントアンドリュー、セントメアリー)で順次事業を展開する予定だ。

J-USEの進捗と成果は、2026年以降の気候資金メカニズム形成にも影響を与える見通しであり、地域の炭素市場構築に向けた一つの実証モデルとして注目される。

参考:https://jis.gov.jm/five-year-initiative-launched-to-integrate-nature-based-solutions-into-urban-development/