炭素除去(CDR)の品質評価・認証大手のアイソメトリック(Isometric)は、バイオ炭の生成・貯留に関するプロトコルおよびモジュールの更新を完了した。今回の改定では、貯留対象となる土壌環境の範囲が農地以外にも拡大されたほか、エネルギー利用に伴う副産物としての生成や、小規模・分散型プロジェクトを対象とする新たなモジュールも追加された。厳格な科学的基準を維持しつつ、サプライヤーにとってのプロジェクト設計の柔軟性を大幅に高める狙いがある。
今回の更新は、買い手、サプライヤー、研究者などを含む30日間のパブリックコメント(公的協議)を経て決定された。アイソメトリックのチーフ・サイエンス・オフィサーであるステイシー・カウク氏は、今回の更新により「最高レベルの科学的厳密性を維持しながら、サプライヤーの選択肢を拡大する」としている。
最大の変更点は、既存の貯留モジュールの適用範囲拡大だ。旧来の「農地土壌におけるバイオ炭貯留モジュール」は、名称を「土壌環境におけるバイオ炭貯留モジュール(v1.2)」へと変更された。これにより、森林土壌やレクリエーションエリア(公園や緑地など)といった、農地以外の生産的・アメニティ用地も正式に貯留場所として認められることとなった。
また、オペレーション面での柔軟性も向上した。安定性に関する厳格な要件を満たすことを条件に、バイオ炭を適用前に最大12ヶ月間備蓄することが可能になったほか、堆肥などの有機資材との混合も認められた。さらに、強化された管理の連鎖(CoC)フレームワークを遵守することで、第三者への販売も可能となる。
品質評価の核心となる「耐久性」の定量化手法も精緻化された。1,000年のクレジット計算において、反応性有機炭素を除外する規定が盛り込まれたほか、粒子サイズの制限や輸送に伴う排出量の扱いに関する指針も明確化された。これらは「世界バイオ炭認証(World Biochar Certificate)」のガイドラインを満たすか、それを上回る基準となっている。
新たな生産手法に対応する2つのモジュールも新設された。「燃焼副産物システムにおけるバイオ炭生産モジュール」は、エネルギーやその他の製品と並行してバイオ炭を生産するプロジェクトを対象とする。「分散型および小規模プロジェクトにおけるバイオ炭生産モジュール」は、地域コミュニティ規模などの小規模な取り組みを対象としており、これまで認証取得のハードルが高かったプロジェクトの参入を促す可能性がある。
包括的な親規定である「バイオ炭生産・貯留プロトコル」もバージョン1.2へと更新された。バイオ炭のライフサイクルの主要段階に基づいた要件表が導入され、モニタリング計画の策定が容易になったほか、プロジェクト設計段階と実施段階の双方で求められる要件が明確化されている。
参考:https://isometric.com/writing-articles/isometric-certifies-updated-biochar-protocol-soil-storage-module-and-two-new-biochar-production-modules
