Isometric、「スーパー汚染物質」市場に参入 埋立地メタンとHFC破壊クレジットを新規認証へ

村山 大翔

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炭素除去(CDR)領域で科学的厳密性を重視する英スタートアップのアイソメトリック(Isometric)は10月、温室効果の高い「スーパー汚染物質(superpollutants)」の破壊に関する2つの新たな認証プロトコルを開発すると発表した。対象は埋立地メタンとハイドロフルオロカーボン(HFC)で、両者の破壊・削減をカーボンクレジットとして認証する仕組みを整備する。

スーパー汚染物質とは、メタン、HFC、一酸化二窒素などを指し、いずれも二酸化炭素(CO2)に比べて温室効果が極めて高い。メタンはCO2の約80倍の温暖化効果を持ち、これらのガスは人為的温暖化の約45%を占めるとされる。2050年までに排出を削減できれば、地球平均気温の上昇を最大0.5度抑制できる可能性がある。

アイソメトリックはこれまでカーボンクレジットの科学的検証を重視してきたが、同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のイーモン・ジャバウィ氏は、「スーパー汚染物質破壊の分野にも科学的厳密性と透明性をもたらす」と述べ、炭素除去分野で培った認証基準をそのまま拡張する方針を示した。新プロトコルの策定は、社内のサイエンスチームと独立した科学者ネットワーク(約300名の専門家で構成)が共同で進める。

冷媒の回収・破壊を手がける米リクーリット(Recoolit)は、2025年5月にグーグルと協業し、二酸化炭素換算25万トン分のスーパー汚染物質を破壊した実績を持つ。同社CEOのルイス・ポトク氏は、「アイソメトリックが科学的検証技術をこの分野に導入することは極めて重要だ。業界の信頼とスケール拡大につながる」と述べた。

また、米非営利団体クール・エフェクト(Cool Effect)もグーグルと共同でブラジル・クイアバの埋立地にメタン破壊設備を導入しており、CEOのジョディ・マニング氏は「メタンのようなスーパー汚染物質への対応は喫緊の課題。アイソメトリックの参入はこの分野の前進を促す」と歓迎した。

さらに、アイソメトリックはグーグルおよびヴォールテッド・ディープ(Vaulted Deep)と共同で、メタン除去量の定量化手法に関する研究も進めている。グーグルのカーボンクレジット・リムーバル担当責任者ランディ・スポック氏は「スーパー汚染物質の除去と炭素除去の両立が地球の急速な温暖化抑止に不可欠だ。アイソメトリックの科学的基準拡張は重要な一歩だ」と述べた。

アイソメトリックが発行するスーパー汚染物質クレジットは、既存の炭素除去クレジットと同様に「追加性」「保守的な算定」「独立検証」の3要件を満たす設計となる。これにより、短期的な気候変動リスクの低減を狙う市場に新たな信頼基準をもたらす見通しだ。

参考:https://isometric.com/writing-articles/isometric-expands-into-superpollutants