1月13日、英国の炭素除去(CDR)標準化団体であるアイソメトリック(Isometric)は、マングローブ再生に関する新しいプロトコルを正式に認定した。
この新基準は、劣化したマングローブ生態系の回復による二酸化炭素(CO2)吸収量を、最新のリモートセンシング技術と厳格な土壌計測によって定量化する枠組みを提供する。同団体にとって、森林再生および森林管理の改善(IFM)に続く、3番目の自然由来の炭素除去手法となった。
本プロトコルは、マングローブの植林や水質改善、外来種の管理を通じて生態系を回復させ、バイオマス(地上部)と土壌の両面で炭素貯蔵を最大化することを目指している。
炭素吸収量の算出には、光検出・測距(LiDAR)や衛星モニタリングといった高度な技術と、詳細な現地調査を組み合わせる。特に土壌炭素については、推定ではなく直接計測を義務付けており、データの信頼性を担保している。
プロジェクト運営において、アイソメトリックは40年間の長期モニタリング期間を義務化した。クレジット発行期間は、マングローブが成熟したバイオマスに達するまでの予測期間に基づき、プロジェクト提案者が決定する。また、塩分濃度の低下や窒素の過剰投入を防ぐ環境保護措置も盛り込まれた。これは、不適切な管理によってメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)といった強力な温室効果ガスが排出されるリスクを回避するためである。
カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のバークレー・カーボン・トレーディング・プロジェクト(Berkeley Carbon Trading Project)に所属するアン・ラベアリソア(Ando Rabearisoa)博士は「本プロトコルは、他の基準に比べてプロジェクトによる炭素便益の推定方法を大幅に改善している。対照区を用いた動的ベースラインの採用により、気候変動への影響をより正確に定量化できる」と指摘した。
今回の認定は、2025年10月に実施されたパブリックコンサルテーションを経て行われた。マングローブは世界全体で最大117億トンの炭素を貯蔵していると推定され、炭素吸収以外にも、高潮などの異常気象からの海岸保護や生物多様性の維持、地域社会での雇用創出といった多面的な便益が期待されている。
ブルーカーボン、特にマングローブ再生は高い吸収ポテンシャルを持つ一方で、算定の複雑さや永続性の担保が課題となってきた。今回、アイソメトリックが40年という長期モニタリングと土壌の直接計測を義務付けたことは、従来のボランタリーカーボンクレジット市場の基準よりも一段高い質を追求する姿勢の表れと言える。
2025年のパブリックコンサルテーションを経て、学術的知見を色濃く反映させたこの基準は、グリーンウォッシュを懸念する機関投資家にとって、ブルーカーボン投資への強力な安心材料になるだろう。
参考:https://isometric.com/writing-articles/a-new-protocol-for-mangrove-restoration


