カーボンクレジットの信頼性向上に向け、炭素除去(CDR)プロジェクトの温室効果ガス(GHG)排出・削減を一元的に評価する新たな枠組みが確立された。Isometricは8月28日、GHG会計モジュールを認証したと発表した。買い手や供給者、学術関係者を含む30日間の公開協議を経て改訂が行われ、科学的厳密性と透明性を担保する内容となった。
新モジュールは、CDR活動の影響を「正味除去量=プロジェクト除去量-ベースライン除去量-プロジェクト排出量」という数式で明示的に示すことを求める。これにより、Isometricが発行する1クレジットが必ず「大気中から1トンの二酸化炭素(CO2)が除去されたこと」を裏付ける仕組みが確立された。
従来、GHG会計要件は個別のプロトコルやエネルギー利用会計モジュールに分散していたが、今回の認証で統合された。エネルギー使用と並び、すべてのCDR経路に一貫した評価基準を適用できる体制が整う。
今回のモジュールでは以下の新たな要件が導入された。
- 高品質なGHGデータの定義を明確化し、供給者が不確実性を減らせるようにした。
- プロジェクト活動の排出量の重要性を判定する「閾値」を設定し、影響が小さい排出よりも精度を高めるデータ収集を優先できる仕組みとした。
- CDRが副産物として発生する場合や、除去したCO2を製品に組み込む場合の排出配分ルールを規定した。
- プロジェクト開発時の排出を複数年にわたり償却する手法に関し、透明性の要件を追加した。
Isometricの最高科学責任者(CSO)ステイシー・カウク氏は「強固なGHG会計は、CDRプロジェクトの気候影響を証明する基盤だ」と述べ、公開協議を通じて科学的妥当性を確保したと強調した。
認証済みモジュールはすべてのプロトコルに適用され、供給者には12カ月間の移行期間が設けられる。Isometricは今後も科学理解やデータ収集技術の進展に応じてモジュールを改訂するとしている。
同社は300人超の独立科学者ネットワークと協働しており、今回の取り組みは国際的なカーボンクレジット市場の信頼性強化につながるとみられる。