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アイソメトリック、分散型バイオ炭モジュールV1.1を認証 工業規模と同等の品質基準を適用

2026.05.28 読了 約4分
アイソメトリック、分散型バイオ炭モジュールV1.1を認証 工業規模と同等の品質基準を適用
出典:<a href="https://isometric.com/writing-articles/isometric-consults-on-major-expansion-to-distributed-biochar-module" target="_blank"Isometric</a>

カーボン除去レジストリのアイソメトリック(Isometric)は、分散型・小規模バイオ炭プロジェクトを対象とする方法論モジュール「Biochar Production in Distributed and Small Scale Projects Module」のVersion 1.1を認証した。30日間のパブリックコンサルテーションを経たもので、分散型バイオ炭プロジェクトに対し、工業規模プロジェクトと同等の品質・厳格性の基準を初めて課す内容となる。

分散型バイオ炭は、農業残渣や林業残渣といったバイオマス原料が豊富に存在する一方で、産業規模のインフラ整備が困難な農村部での生産を想定する。パイロライザーや窯を原料供給源の近傍に設置することで、本来は廃棄される素材を活用する。生成されたバイオ炭を農地に施用することで作物の生育促進、合成肥料への依存低減、原料供給源への循環的還元といった副次効果が生じる。

V1.1の主要改訂点

V1.1では複数の要件が追加・強化された。

コミュニティエンゲージメントと便益分配に関するガイダンスが拡充されたほか、排出量モニタリング、原料調達、窯の安全性、標準作業手順書(SOP)に関する新規要件が導入された。供給者がIoTセンサーを活用してデータ収集や窯の運転を自動化することも可能となり、大規模プロジェクトを支える施設グルーピング規定も新設された。

MRV面では直接測定を原則とし、運用上直接測定が困難な場合は保守的なディスカウントを適用することで、発行されるカーボンクレジット1単位が大気から除去された二酸化炭素1トンに対応することを担保する設計とした。不完全燃焼の副生成物であるブラックカーボンを明示的に計上する点は、他のクレジット認証機関がこれまで対応してこなかった論点である。

実装面では、デジタルMRVの優先パートナーとしてプランブー(Planboo)との連携を発表している。

最初の登録プロジェクトと取引事例

更新モジュール下で最初にカーボンクレジット発行登録を行ったのは、分散型バイオ炭の供給事業者であるカーボニアーズ(Carboneers)とヴァラハ(Varaha)の2社である。2026年5月19日にはヴァラハと、高品質カーボン除去マーケットプレイスのスーパークリティカル(Supercritical)が、2026年中に1万トンの分散型バイオ炭クレジットを市場に投入する取引で合意した。いずれもアイソメトリックの認証を受ける。

カーボニアーズ創業者のベレンド・デ・ハース(Berend de Haas)氏は、本モジュール下で最初の登録プロジェクトとなったことに言及し、追跡可能性の高い高品質カーボンクレジットの供給に意欲を示した。ヴァラハの最高商務責任者を務めるイカルス・ヤンセン(Ikarus Janzen)氏は、分散型バイオ炭の潜在性を実現するには厳格かつ正確な認証が不可欠であり、本モジュールはそれを担保する枠組みであると評価した。

スーパークリティカルのリードクライメートサイエンティストであるジュヌビエーブ・ホジンズ(Genevieve Hodgins)氏は、本プロトコルが従来の小規模認証基準と比較して、特にメタン排出モニタリングで段階的に厳格化された点を評価する。コーポレートバイヤーが求める社会的コベネフィットを伴うコミュニティ規模プロジェクトへの信頼性の高い資金流入経路を提供するものと位置づけた。

なお、第二ソースによれば、アイソメトリックは本モジュールに加えてモバイル型バイオ炭生産モジュール(Version 1.0)も新設し、ワンファイ(Wongphai、タイ)とバイオチャークラブ(Biochar Club、米)が初期供給事業者として参加するとされる。本件は移動可能な反応炉で分散・季節性のバイオマスに対応する設計とされ、分散型モジュールと並行する補完的枠組みである。

編集デスクの視点

本モジュール認証は、分散型バイオ炭を「品質を妥協した小規模CDR」から「工業規模と同等の品質基準下にあるカーボン除去」へと位置づけ直す市場構造上の転換点である。

除去系カーボンクレジット市場では、これまで分散型・小規模プロジェクトは品質要件の緩和と引き換えに参入障壁を下げる構図が一般的であった。アイソメトリックは品質基準を緩めずIoT・dMRVで運用負荷を吸収するアプローチを採用しており、コーポレートバイヤーが求める品質と、農村部コミュニティへの資金流入という社会的便益を両立させる経路を制度的に確立した点に意義がある。

分散型バイオ炭が高品質除去系カーボンクレジット市場のメインストリームに統合されるか否かは、今後の認証機関間の基準整合と、コーポレートバイヤー側の調達基準が分散型を「同格」として受容するかに左右される。

参考:https://isometric.com/writing-articles/isometric-consults-on-major-expansion-to-distributed-biochar-module

関連タグ Isometric バイオ炭
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。