「1,000年のCO2固定」を公式認証 Isometric、建材向けバイオ炭の炭素除去(CDR)モジュールを承認

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジット標準を手がけるIsometricは、建材に使うバイオ炭による炭素除去(CDR)プロジェクトの新ルールを正式に認証した。30日間の意見公募を経て承認されたこのモジュールにより、コンクリートやアスファルトにバイオ炭を混ぜてCO2を長期間封じ込める手法で、CDR由来のカーボンクレジットを発行できるようになる。貯留の持続期間は「1,000年」と設定された。

バイオ炭は、木材や農業残さなどのバイオマスを酸素の少ない環境で熱処理(低酸素パイロリシス)して作られる黒色の固形炭素で、大気中に出るはずのCO2を長く固定する性質がある。これを建材内部に封じ込めることで、CO2の漏れを防ぎ、建設業界の脱炭素に貢献できる。

Isometricはこのモジュールで、バイオ炭の性質の評価、CO2の固定がどれだけ長く続くかの予測、万が一のCO2再排出リスクの分析など、厳格なMRV基準を定めた。分析は「1,000年後まで」の長期視点で行われ、解体やリサイクル時のバイオ炭の損失リスクも想定されている。

クレジット発行を目指す事業者は、以下の点を明確に証明する必要がある。

  • 建材の製造プロセスと使用機材
  • 実際にバイオ炭が使われた証拠
  • 従来の建材と比較した性能
  • CO2が確実に固定されるというデータとモデル

また、プロジェクト全体を通じて、環境・社会への影響に配慮し、建材の法的要件をすべて満たすことも求められる。

この新モジュールは、Isometricの「アイソメトリック・スタンダード」に基づき、社内の科学チームと独立科学者ネットワークの300人以上の専門家によって設計された。開発段階では、すでにバイオ炭を建材に使っている企業のアルターバイオータ(alterBiota)やエコロックト(ecoLocked)からも意見が寄せられた。

建設業は「排出削減が難しい(ハード・トゥ・アベート)」分野とされるが、バイオ炭を使ったCDRはその有力な解決策となる可能性がある。今後のプロジェクトの拡大と、カーボンクレジット市場での注目が集まりそうだ。

参考:https://registry.isometric.com/module/biochar-storage-built-environment/1.0#introduction