炭素除去(CDR)レジストリ大手のIsometricは9月4日、100社目の登録サプライヤーとして英スタートアップ「フラックス(Flux)」を迎え入れたと発表した。過去1年間で登録サプライヤー数は4倍以上に増加しており、透明性・科学的厳密性・迅速な検証を求める市場の需要が拡大していることを示している。
フラックスは岩石風化促進(Enhanced Weatheringの先行企業で、2030年までに500万トンのCO2を除去する目標を掲げる。同社は農業コミュニティと提携し、アルカリ性の岩石粉末を農地に散布することで、土壌の酸性化を中和しつつ、養分を補い、収量増加と炭素固定を同時に実現する仕組みを導入している。
フラックスの最高経営責任者(CEO)サム・デイビーズ氏は「イスオメトリックとの提携により、アフリカ全域でエンハンスト・ウェザリングを大規模に展開する上で大きな一歩を踏み出せる。科学的厳格さと透明性を備えた検証手法は、我々の理念と一致し、購入者に気候と地域社会への確実なインパクトを保証できる」と述べた。
Isometricに登録するサプライヤーは、耐久性・追加性・科学的検証を満たす「イスオメトリック・スタンダード」に準拠する必要がある。特にエンハンスト・ウェザリングにおいては、2024年12月に農業分野での初の検証済みクレジットを発行し、測定・報告・検証(MRV)の新たな基準を打ち立てた。
従来、エンハンスト・ウェザリングは「効果の測定が難しい」として信頼性に課題があった。しかし同プロトコルにより、CO2除去が統計的に実証される仕組みが整備され、1クレジット=1トンの恒久的除去という担保が市場に提供されている。
Isometricの登録リストには、バイオマス炭素貯留44社、エンハンスト・ウェザリング17社、海洋CDR12社、DAC(直接空気回収)10社、植林9社、鉱物化8社が含まれ、産業横断的な広がりを示している。代表例としてチャーム・インダストリアル(Charm Industrial)、マティ・カーボン(Mati Carbon)、ヴォールテッド・ディープ(Vaulted Deep)、リビング・カーボン(Living Carbon)などがある。
ブルームバーグNEFは2050年までに炭素除去クレジットの供給が20〜35倍に拡大すると予測しており、数兆ドル規模の脱炭素資金調達手段となる可能性がある。ただし、その前提は「信頼性の確保」であり、Isometricは公開データと厳格なプロトコルを通じて市場の健全性を担保する役割を担っている。
今回の100社到達は、耐久的CDR市場の成長が単なる数量拡大ではなく、品質基準の向上を伴うものであることを示している。Isometricは今後も「科学的に裏付けられた炭素除去」を市場に供給し続ける構えだ。
参考:https://isometric.com/writing-articles/isometric-signs-100th-carbon-removal-supplier-flux