米ボストンに拠点を置く再生農業スタートアップのインディゴ・アグ(Indigo Ag)は2026年2月25日、同社のカーボンクレジット・プログラムを通じて創出された炭素除去・削減量が累計200万トン(CO2換算)を超えたと発表した。
第5回目となる今回の発行では、CARに登録された110万トンの高品質なカーボンクレジットが市場に供給される。これはボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)における農業系プロジェクトとして最大級の規模であり、土壌炭素貯留が商用フェーズへ完全に移行したことを示している。
今回のマイルストーンは、インディゴ・アグが2018年から米国内28州、約800万エーカー(約324万ヘクタール)の広大な農地で展開してきた取り組みの成果だ。同社は被覆栽培(カバークロップ)や不耕起栽培といった再生農業の手法を導入することで、土壌への炭素貯留を促進。その削減・除去量は、米国における一般家庭約28万2,000世帯の年間エネルギー使用量に相当する。
特筆すべきは、今回のカーボンクレジットがICVCMのコア・カーボン原則(CCP)ラベルを取得した点だ。これは、厳格な第三者認証と高度なデジタル監視・報告・検証(dMRV)技術に基づいた、信頼性の高いカーボンクレジットであることを証明している。
土壌炭素除去(CDR)への関心は急速に高まっており、米マイクロソフト(Microsoft)はすでにインディゴ・アグから最大285万トンのカーボンクレジットを購入する12年間の長期契約を締結している。この契約規模は、農業系CDRとしては過去最大級となる。
価格面においても、農業由来のカーボンクレジットは生物多様性の保全や水資源の保護といったコベネフィットが付加価値として評価されやすい。インディゴ・アグによれば、これまでに参加農家へ支払われた総額は数千万ドル(数十億円規模)に達しており、農業経営の新たな収益柱として定着しつつある。
同社は最新のAIチャットボットを統合したバイヤー向けデータポータルを刷新し、企業のデューデリジェンスを簡素化した。また、リモートセンシングアルゴリズムの改良により、農地の管理状況をより正確かつ迅速に検証できる体制を整えている。
IPCCの報告によれば、世界の農地は年間最大4ギガトンのCO2を削減できる潜在能力を持つ。インディゴ・アグの成功は、この潜在力を具体的な「価値」に変えるデジタル基盤が整ったことを意味している。
農業由来のカーボンクレジットは、排出権取引の枠組みを超え、サプライチェーン全体の脱炭素化を目指す日本企業にとっても有力な選択肢となる。特に、測定・報告・検証(MRV)のデジタル化が進んだことで、中小規模の農家や企業でも透明性の高いカーボンクレジットを創出・調達できる環境が整いつつある。
今後は、日本国内の農地における炭素貯留ポテンシャルの再評価と、国際基準に準拠したカーボンクレジット化への動きが加速するだろう。
