先住民主導の炭素・自然金融を加速 BHP財団が「First 30×30 Canada」に1,000万ドル拠出

村山 大翔

村山 大翔

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カナダのオタワで1月22日、先住民主導の自然保全を支援するプログラム「First 30×30 Canada」は、BHP財団(BHP Foundation)から1,000万ドル(約15億円)の助成金を獲得したと発表した。

この資金は、先住民コミュニティによるカーボンクレジット創出や「自然金融」へのアクセスを支援するために活用される。

カナダ政府が掲げる「2030年までに陸域と水域の30%を保全する」という国際目標の達成に向け、先住民の伝統的な土地管理を経済的に裏付ける狙いがある。

今回の助成を主導したBHP財団は、世界最大級の資源会社であるBHPが設立した非営利組織である。

First 30×30 Canadaは、ネイチャー・フォー・ジャスティス(Nature For Justice)が、イサーク・オラム財団(IISAAK OLAM Foundation)およびネイチャー・フォーカス・デベロップメント(Nature Focus Development)と共同で運営している。この大規模な資金投入により、先住民が主体となる自然に根ざした解決策(NbS)プロジェクトの構築が急速に拡大する見通しだ。

世界的な気候資金の流れにおいて、地方主導のプロジェクトに届く資金は全体の10%未満にとどまっているという調査結果がある。多くの先住民国家は、カーボンクレジット市場への参入や長期的な収益路線の確立に不可欠な、初期段階の資金や技術的障壁に直面してきた。First 30×30 Canadaは、この資金ギャップを埋めるため、先住民政府に対してプロジェクト設計のための先行資金を提供する。

具体的な支援内容には、伝統的領土における炭素・自然金融の潜在的な市場価値評価、NbSプロジェクトの実現可能性調査(フィジビリティスタディ)、および「自由で事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)」に準拠した利益配分アドバイザリーサービスが含まれる。これにより、投資家の信頼を得られる透明性の高いカーボンクレジットの創出を目指す。

ネイチャー・フォー・ジャスティスの専務理事であるスティーブン・ニタ(Steven Nitah)氏は、「先住民のリーダーシップなしにカナダが30×30の公約を果たすことはできない。このプログラムは先住民の経済的自立を支え、世代を超えた責任に基づく土地管理を永続させるものだ」と述べた。また、BHP財団の最高経営責任者(CEO)であるクリステン・レイ(Kristen Ray)氏は、「30×30の約束が真のインパクトをもたらすためには、先住民の知識に基づいた主導権が不可欠である」と指摘した。

プログラムは、2026年第1四半期(1〜3月)からカナダ全土のパートナー先住民国家とともに初期活動を開始する。今後、民間セクターや他の財団からの追加投資を呼び込むモデルケースとなるかが注目される。

今回のニュースは、カーボンクレジット市場における「クレジットの質(インテグリティ)」の定義が、単なる炭素吸収量から「先住民の権利保護と利益還元」などへとシフトしていることを示している。

特にカナダは、広大な森林や湿地を背景にNbSの供給源として世界的に注目されている。しかし、過去には先住民の権利を無視した「グリーン・グラビング(環境保全を名目とした土地占有)」が批判の対象となるケースもあった。BHP財団のような巨大資本が、初期段階のキャパシティ・ビルディング(能力構築)に巨額資金を投じることは、将来的に「社会的にクリーンな高品質クレジット」を安定調達するための先行投資とも読み取れる。

日本企業にとっても、オフセット目的で海外のNbSクレジットを購入する際、そのプロジェクトがFPIC(自由で事前の十分な情報に基づく同意)に基づいているか、先住民の経済的自立に寄与しているかを精査することが、外部評価やレピュテーションリスク管理の観点から不可欠なスタンダードになっていくだろう。

参考:https://first30x30.earth/us10-million-investment-to-strengthen-indigenous-led-conservation-and-advance-nature-finance-across-canada/