民間資本が先住民の森を支える 「インディジナス・アマゾン成果連動債」約250億円で市場再生へ

村山 大翔

村山 大翔

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11月3日、ブラジル・ベレン発。森林保全事業を展開するエバーランド(Everland)は、仏大手金融機関BNPパリバと共同で開発した「インディジナス・アマゾン成果連動債(Indigenous Amazon Outcome Bond)」の第一弾として、総額1億6,000万ドル(約250億円)の購入意向書(LoI)を企業から獲得したと発表した。これは先住民・地域コミュニティ主体のREDD+森林保全プロジェクトを支援する新たなカーボンファイナンス枠組みであり、民間資本を高品質な自然由来カーボンクレジット市場へ再び呼び戻す動きとして注目を集めている。

この債券は「成果連動型支払い(Outcome-based financing)」の仕組みを採用し、投資家から集めた資金を先住民が主体となる森林保全活動へ直接届けることを目的とする。エバーランドは総額5,000万ドル(約78億円)の前払資金を提供し、最大20件のREDD+プロジェクトを立ち上げる計画である。これらのプロジェクトは、新たに策定された「イクイタブル・アース基準(Equitable Earth Standard)」の下で認証を受ける予定だ。

現在までに、アマゾン全域から23件のプロジェクト提案が寄せられ、約9万人の先住民・地域住民が関与し、対象森林面積は約1,700万ヘクタールに及ぶ。第1陣となる5件のプロジェクトは2025年末までに選定される見込みである。

バイオダイバーシティ助言機関として、野生ネコ科保全団体パンテラ(Panthera)が参画し、ジャガーの生息地をつなぐ「ジャガー・コリドー」内の案件を優先的に支援する。

プロジェクト期間は40年を予定し、認証済みカーボンクレジットの販売収益のうち、ブラジル国内案件では少なくとも70%が地域コミュニティに還元される仕組みだ。全体として10年間で10億ドル(約1,560億円)超の資金流入が見込まれている。

ガヴィオン・キイカテジェ族の指導者コンシタ・ソンプレ氏は、11月1日にベレンで開催された「グローバル・シチズン・フェスティバル:アマゾニア」で次のように語った。
「これは『気候正義』が求める民間セクターの行動です。今日、私は希望に満ちています。先住民と企業が心を一つにして地球と人々のために取り組む新しいモデルを築けるのです」と述べた。

エバーランドのジェラルド・プロルマン会長は「今こそ勇気が求められる時だ。科学は危機を示し、真実は行動を迫っている。私たちは明確で信頼できる道筋を示した」と述べ、企業に対して参加を呼びかけた。

イクイタブル・アースのマヌエラ・ヤマダ認証部長は「本イニシアチブは、森林保護に携わる地域社会へ気候資金を確実に届ける重要な一歩だ。新基準により、検証可能で持続的な成果を保証できる」と語った。

さらに、フォレスト・トレンズのベト・ボルヘス氏は「先住民を支えることが森林を守る最善の方法であるという認識が世界に広がりつつある」と指摘した。

国際連合の2025年10月報告によると、2030年までに森林保全・再生への世界的な支出を現在の3倍に増やす必要があるとされる。先住民が守り続けてきた森を支援する資金は依然として不足しており、本債券はそのギャップを埋める試みとして期待されている。

エバーランドは声明で「REDD+プロジェクトは地域主導で資金を循環させ、気候と生物多様性危機を回避する実証済みの仕組みだ」とし、ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の信頼回復に向けた再出発を強調した。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/indigenous-amazon-outcome-bond-initiative-signals-market-revival-for-high-quality-indigenous-centered-forest-conservation-projects-302602437.html