2026年1月27日、米インディアナ州議会において、二酸化炭素(CO2)を地下深部に封じ込める「クラスVI」井戸の規制権限を米連邦環境保護庁(EPA)から州政府へ移管させるための法案審議が本格化した。
同州内では現在、9件のCCS(炭素回収・貯留)プロジェクトがEPAの審査待ち状態にあり、州への権限移管(プライマシー)によって認可プロセスを迅速化する狙いがある。州独自の規制枠組みを構築することで、炭素除去(CDR)関連の投資を呼び込み、低炭素燃料市場における州の競争力を高めるのが目的だ。
現在、インディアナ州で進められている下院法案1368号(HB1368)は、インディアナ州天然資源局(DNR)に対して、クラスVI井戸の主導的な法的執行権限を求めるよう義務付けるものだ。法案の提案者であるエド・ソリダイ州下院議員は、「インディアナ州の競争力を維持し、ビジネスと雇用を確保したい。ワシントンの政策は振り子のように変動しており、州として柔軟に対応できる準備が必要だ」と述べ、連邦政府のエネルギー政策に左右されない独自の認可体制の重要性を強調した。
背景には、連邦政府による認可プロセスの停滞がある。
現在、全米でクラスVIの認可権限を持つのは、アリゾナ、ルイジアナ、ノースダコタ、テキサス、ウェストバージニア、ワイオミングの6州に限定されている。これら以外の州ではEPAが直接審査を行うが、認可までに数年を要するケースも珍しくない。

世界最大のバイオエタノール生産者であるポエット(POET)を含む産業界は、低炭素燃料の生産に不可欠なCO2圧入井の認可遅延が、多額の投資と資本を投じるプロジェクトの大きな障壁になっていると指摘し、州政府による効率的な審査を強く支持している。
一方で、規制権限の移管に対しては慎重な意見も根強い。
市民活動家などの批判層は、州当局が専門知識や人員、リソースの不足により、長期的な環境保全よりもプロジェクトのスピードを優先する可能性を危惧している。特にCO2の地下貯留は比較的新しい技術であり、地層の健全性監視や長期的な賠償責任など、高度なリスク管理が求められるため、EPAによる厳格な精査を維持すべきだとの主張だ。
現在、インディアナ州内でクラスVIの認可を取得しているのは、ワバッシュ・バレー・リソーシズ(Wabash Valley Resources)のアンモニア製造施設に伴う1件のみである。今後、HB1368の成否は、同州のみならず米国中西部におけるカーボンクレジット創出の基盤となるCCSインフラの展開速度を左右する試金石となる。法案は今後、州議会の各委員会でのさらなる審議を経て、採決に付される予定だ。
本件は、カーボンクレジットの供給サイドにおける「認可のボトルネック」という世界共通の課題を浮き彫りにしています。
現在、CCSを活用した炭素除去クレジット(CDR)の需要は急増していますが、インフラ整備の遅れが最大の供給リスクとなっています。インディアナ州が規制権限を取得すれば、ルイジアナ州などの先行例と同様に、プロジェクトのリードタイムが大幅に短縮される可能性があります。
投資家にとっては、州レベルの規制動向を追うことが、将来のクレジット供給量を予測する上でこれまで以上に重要になるでしょう。


