国際航空運送協会(IATA)は、「バクーからベレンへの1.3Tロードマップ」に関する協議への回答として、国際航空の排出量削減・オフセットスキーム(CORSIA)の完全な潜在能力を解放するため、ホスト国に対しパリ協定第6条の迅速な実施と「承認書(LoA)」の発行を強く求めている 。
承認書発行の停滞が排出権供給を阻害
IATAと加盟航空会社は、国際民間航空機関(ICAO)の下で各国が設定した、2050年までに国際航空からのCO2純排出量ゼロを達成するという長期的な目標にコミットしている 。この集団的取り組みの重要な柱であるCORSIAは、オフセットを通じて気候変動対策を推進すると同時に、特に開発途上国における雇用と経済活動の成長を支援するよう設計されている 。
しかし、航空機運航者はCORSIA適格排出ユニット(EEU)の不足に直面しており、その主な原因は、ホスト国が承認書(LoA)や証明書の発行に苦戦しているためである 。承認書は、パリ協定第6条に基づき、国際的に移転された削減成果(ITMOs)をCORSIAの遵守に使用することを許可するための、ホスト国が発行する正式な文書である 。
2035年までに1200億ドル超の気候変動資金創出を予測
CORSIAは、航空会社の資金を質の高い、独立して検証された排出削減プロジェクト、特に開発途上国でのプロジェクトに振り向けることで、スケーラブルな資金調達の機会を解き放つ 。IATAは、CORSIAが2024年から2035年の間に累積で1,200億ドル(約18.6兆円)を超える資金を生み出すと予想しており、これは気候変動資金への貢献と、開発途上国に資金を投入できる投資家層を拡大する、世界的な流動性のある透明なカーボンクレジット市場の創設を裏付けている 。
また、CORSIAは、開発途上国に対し、CO2排出量削減、国際炭素市場へのアクセス、より広範な投資の誘致を可能にする 。これに対し、航空券への税金は主に政府の資金調達を目的とするものであり、本質的に気候変動対策のための手段ではないとIATAは指摘している 。
IATA、各国に第6条の実施と調和を要請
IATAと加盟航空会社は、CORSIAの潜在能力を十分に引き出し、開発途上国に重要な気候変動資金の機会を提供するため、ホスト国に対して以下の迅速な行動を取るよう求めている 。
- ICAOと国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のプロセスの調和:報告手続きを調和させ、二重計上を防ぐ 。
- 実施支援の要請:承認書発行と対応する調整(Corresponding Adjustments)を実施するための適切な構造を確立するための支援を要請する 。
- 優先順位付け:CORSIA EEUがパリ協定第6条第2項に基づき移転されるクレジットの最大3分の2を占める可能性があるという点で、上記を緊急の気候変動対策として優先する 。
IATAは、各国が第6条の実施手続きを完了すれば、適格なプロジェクトのパイプラインが迅速に市場に出る可能性があると強調している。現在、ガイアナのみがCORSIA EEUを世界的なカーボンクレジット市場で販売するためにリリースした唯一の国である。