「次世代SAFとCO2除去(CDR)技術に期待」 IAG、過去最多29社のスタートアップを採択

村山 大翔

村山 大翔

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国際航空グループ(International Airlines Group’s(IAG))は8月12日、スタートアップ支援プログラム「IAGi Accelerator」の2025年採択企業として、過去最多となる29社を選出したと発表した。中でも、二酸化炭素(CO2)除去(CDR)や持続可能な航空燃料(SAF)に特化した15社が注目される。欧州でSAFの利用義務化が進む中、IAGは次世代の脱炭素技術をいち早く取り込む構えだ。

IAGは、英国航空(British Airways)やイベリア航空(Iberia)などを傘下に持つ欧州の大手航空グループで、航空業界の脱炭素化に向けた技術支援を強化している。スタートアップ支援プログラム「IAGi Accelerator」は今年で9年目を迎え、今回は29社を採択。初めて参加企業を2つのトラックに分けた。

一つ目は、すでに技術実証が可能な企業を対象とした「Deploy」トラック。もう一つは、脱炭素をテーマにした初期段階の企業を対象とした「Discover」トラックである。

「Discover」に採択された15社のうち多くが、CO2を回収・再利用する直接空気回収(DAC)や、再生可能エネルギーから作る合成燃料(eSAF)などの新技術に取り組んでいる。

たとえば、英エアハイブ(Airhive)は、工業技術を応用して高効率のDAC装置を開発。米ソラ・フューエル(Sora Fuel)は、CO2の回収と燃料化を一つの装置で同時に行う技術で、エネルギー効率の高い航空燃料の製造を目指している。

また、英ミッション・ゼロ・テクノロジーズ(Mission Zero Technologies)は、電気の力で空気中のCO2を回収する装置を開発中。回収したCO2は、合成燃料や炭素を含む建材などに再利用可能だ。

SAF分野では、フィンランドのリキッド・サン(Liquid Sun)が、CO2と水から合成燃料をつくる装置を開発し、実証施設の建設を進めている。米リディアン(Lydian)も同様に、再エネとCO2から燃料を製造する技術を持つ。

一方、英国のカイロス・カーボン(Kairos Carbon)は、下水汚泥などの廃棄物を炭化させることで、長期間炭素を固定できる「耐久型の炭素除去」技術を開発している。外部エネルギーを使わず、処理コストは1トンあたり50ドル以下を目指している。

IAGのイノベーション責任者、ニシャ・バッソン=ムニエ氏は「エネルギー移行の分野では、初期段階のスタートアップが急増している。彼らと早期に関わることで、大きな技術革新につながる可能性がある」と語った。

欧州連合(EU)や英国では、2025年以降に航空会社へSAF使用を義務づける規制が予定されている。IAGの今回の取り組みは、そうした変化に先んじて、革新的技術を取り込む戦略といえる。

このプログラムは単なる支援にとどまらず、IAGの投資部門「IAGi Ventures」とも連携しており、過去にはDACから航空燃料を製造する米トゥエルブ(Twelve)なども輩出している。

IAGは「今回の支援によって、将来の航空業界にとって重要な技術が育つことを期待している」としており、6カ月間の支援を通じて、商用化に向けた進展が注目される。

参考:https://skift.com/2025/08/11/exclusive-the-29-aviation-startups-in-iags-2025-accelerator-revealed/