アメリカ拠点の炭素除去(CDR)スタートアップ、テラトン(Terraton Industrial, Inc.)は8月28日、シード資金調達ラウンドで1,150万ドル(約17億円)を確保したと発表した。調達資金はアフリカを中心とする新興市場でのバイオ炭CDR事業拡大に充てられる。
本ラウンドは米投資会社ローワーカーボン・キャピタル(Lowercarbon Capital)とギガスケール・キャピタル(Gigascale Capital)が共同主導し、グーグルのジェフ・ディーン氏や元セールスフォース会長のブレット・テイラー氏ら著名投資家も参加した。日本からはグローバル・ブレイン(Global Brain)が、ANAホールディングスの出資を受けたファンドを通じて出資した。
バイオ炭は農業残渣を炭化して土壌に固定する技術で、CO2を長期的に封じ込めながら土壌改良効果ももたらす。2024年には25万トン以上の除去量を記録し、既存のCDR手法の中で最も規模の大きい技術となった。新興国の農家にとっては気候対策と収入源の双方を担うが、設備投資負担や市場アクセスの壁が普及を妨げてきた。
テラトンはこの課題を解消するため、ソフトウェア・ハードウェア・資金調達を組み合わせた「フルスタック」モデルを展開する。初期投資を抑えつつ、農産業者がカーボンクレジット市場に参入できる仕組みを提供する点が特徴だ。
同社はすでにガーナのスリーマウンテンズ・カカオ社、ケニアのナッツ加工会社エコフィックス社と提携し、年間2万トン以上のCO2削減を見込むプロジェクトを開始した。農家は廃棄物売却収入や土壌改良による収量増加の恩恵を受ける。
テラトンのケビン・ギブス最高経営責任者(CEO)は「需要の高いバイオ炭クレジットと農産業者をつなぐ架け橋になる」と強調し、「資金調達により、農家と炭素除去経済の双方にインパクトを拡大できる」と述べた。
グローバル・ブレインは、ANAフューチャー・フロンティア・ファンド(総額80億円)および高輪ゲートウェイ・グローバル・コベネフィッツ・ファンド(総額約100億円予定)を通じて投資。ANAなどのネットワークを活用し、事業成長を支援する方針を示した。
さらに気候基金テラセット(Terraset)がガーナ事業からのカーボンクレジットを先行購入する契約を結んでおり、市場需要の高さが裏付けられた形だ。今後はアフリカ以外の新興国への展開も視野に入れる。
世界のカーボンクレジット市場は拡大基調にあり、農業廃棄物を活用するバイオ炭CDRはコスト競争力と副次的利益を兼ね備えた技術として注目度を増している。
参考:https://www.linkedin.com/company/terraton/posts/?feedView=all