HolcimがノルウェーのCO2回収企業に出資 「ニアゼロ・セメント」の商用化を加速

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの建設資材大手ホルシム(Holcim)は2026年1月27日、ノルウェーの炭素回収技術専門企業であるカプソル・テクノロジーズ(Capsol Technologies ASA)への戦略的出資を実施したと発表した。

燃料転換だけでは削減が困難なセメント製造工程由来の二酸化炭素(CO2)を、独自の熱炭酸カリウム(HPC)技術で回収し、低炭素建材の供給体制を世界規模で強化するのが狙いである。

今回の投資は、2025年にドイツのドッテルンハウゼンにあるホルシムのセメント工場で実施された実証プロジェクト「カプソル・ゴー(CapsolGo)」の成功を受けたものである。カプソル・テクノロジーズが提供するポスト燃焼回収システムは、産業ガスの処理に広く用いられる熱炭酸カリウム溶媒を使用しており、安全性が高く、熱回収を統合することでエネルギー効率を大幅に向上させる点が特徴となっている。

セメント産業は世界のCO2排出量の約8%を占めるとされ、その排出の多くは原料である石灰石の脱炭素反応という製造工程そのものに起因する。ホルシムのオペレーショナル・エクセレンス責任者であるラム・ムトゥ氏は、ホルシムの操業ノウハウとカプソル・テクノロジーズの回収プラットフォームを組み合わせることで、「ニアゼロ・セメントを大規模に生産し、高まる顧客需要に応えるための重要な一歩を踏み出した」と述べた。

ホルシムは、自社のコーポレート・ベンチャー・キャピタル部門であるホルシム・メーカー・ベンチャーズ(Holcim MAQER Ventures)を通じて、毎年500社以上のスタートアップを審査している。今回のカプソル・テクノロジーズへの投資は、同部門による19件目の戦略的投資であり、代替材料やデジタル効率化ツールと並び、炭素除去(CDR)技術を脱炭素ロードマップの中核に据えている。

2024年度の売上高が162億スイスフラン(約2兆7540億円)に達する世界最大級の建材メーカーであるホルシムは、今後もオープンイノベーションを通じて革新的な技術のスケールアップを推進する方針だ。カプソル・テクノロジーズのウェンディ・ラム最高経営責任者(CEO)は、「ホルシムとの提携深化は、パイロット運用から長期的な産業協力への自然な進展である」と指摘し、最も炭素集約的な産業の一つにおける排出削減を加速させる意欲を示した。

今後は、カプソル・テクノロジーズの技術をホルシムのグローバルな拠点へ展開し、各国の環境規制強化や低炭素資材への需要増大に対応していく。次なる焦点は、回収したCO2の貯留または資源化(CCUS)に関する具体的なプロジェクトの進展となりそうだ。

今回の出資は、セメント業界における「削減困難な排出(Hard-to-abate)」への解決策が、概念実証(PoC)から産業実装のフェーズへ移行したことを象徴している。特に、2025年のドイツでの実証成功から間を置かずに戦略出資へ踏み切ったスピード感は、欧州の炭素価格高騰や規制圧力が背景にある。

日本の事業者にとっても、ホルシムのようなグローバルリーダーがどの炭素回収技術(今回はHPC法)を「勝ち筋」として選んだかは、将来の技術選定やカーボンクレジット創出の観点から極めて重要な指標となる。

今後は、回収したCO2をどのように隔離・固定し、高付加価値なカーボンクレジットとして収益化していくかという「出口戦略」の具体化に注目したい。

参考:https://www.capsoltechnologies.com/Holcim-invests-in-Capsol-to-scale-its-advanced-carbon-capture-technology-pr