米国ハワイ州の連邦地方裁判所は12月23日、クルーズ船の運営企業などを対象とした新たな「気候変動対策税(Act 96)」の施行差し止めを求める仮処分申請を棄却した。ジル・A・オタケ(Jill A. Otake)連邦判事による判決を受け、同法は2026年1月1日から予定通り施行される。
この新法は、クルーズ客が支払う料金に一定の税を課し、炭素除去や気候変動対策の財源を確保する米国初の「気候インパクト料」として注目されている。

新法の枠組みでは、ハワイの港に停泊するクルーズ船のオペレーターに対し、航海全体の日数に占める州内停泊日数の割合に応じて、総運賃の11%を課税する。さらに各郡が最大3%の上乗せ徴収を認めており、合計で最大14%の税率となる。
この税収は年間約1億ドル(約150億円)に達すると試算されており、州政府はこれを山火事対策や海岸浸食の防止、さらに自然資本の回復を通じた炭素吸収源の保護といった環境スチュワードシップの財源に充てる方針だ。
判決の中でオタケ判事は、州政府による徴税権の「極めて重要な重要性」を強調し、原告側が訴訟の現段階で勝訴する可能性が十分に示されていないと指摘した。
また、クルーズ船を既存の宿泊税(TAT:Transient Accommodation Tax)の枠組みに組み込むことは、陸上のホテル事業者との公平性を保つものであり、船舶に特恵的な扱いを与えるべきではないとの見解を示した。
これに対し、原告であるクルーズ船国際協会(CLIA:Cruise Lines International Association, Inc.)と、訴訟に介入した連邦政府は、この課税が憲法の「トン数条項(Tonnage Clause)」に抵触すると主張している。
同条項は、連邦議会の同意なしに州が船舶の港湾利用に対して課税することを禁じている。原告側は、今回の税が実質的に港湾への入港権に対する「恐喝」にあたると非難しており、判決直後に控訴する方針を明らかにした。
本件は、ハード・トゥ・アベート(削減困難)セクターとされる海運業界に対し、地域の気候変動対策や自然由来の炭素除去(CDR)プロジェクトの資金源を直接求める画期的な事例となる。
ハワイ州のジョシュ・グリーン(Josh Green)知事は2025年5月の署名時に、この税を「気候回復力と持続可能な観光を支援するための重要な一歩」と位置づけており、判決が確定すれば、同様の環境負荷課税を検討する他の自治体や国々の政策決定に大きな影響を与える可能性がある。
参考:https://ag.hawaii.gov/wp-content/uploads/2025/12/Opinion.pdf


