オーストラリアの低炭素液体燃料(LCLF)企業ハムアール・エナジー(HAMR Energy)は2月11日、シリーズAで1,000万豪ドル(約9億8,000万円)を調達したと発表した。出資にはカンタス航空(Qantas Airways)、エアバス(Airbus SE)、ティッセンクルップ・ウーデ(thyssenkrupp Uhde GmbH)が参加した。資金はビクトリア州で進める森林残渣由来メタノールおよび持続可能な航空燃料(SAF)製造事業の開発に充てる。
今回の調達は、オーストラリアが進めるLCLF産業育成政策の具体化と位置付けられる。同国政府は11億豪ドル(約1,078億円)規模のLCLF生産インセンティブ制度を打ち出しており、国内でのSAF供給体制構築を後押ししている。
主力案件は、ビクトリア州ポートランドで計画する「ポートランド・リニューアブル・フューエルズ(PRF)」である。同施設は、地域の植林産業から発生する残渣バイオマスを原料に、年間30万トンの低炭素メタノールを生産する計画だ。メタノールは船舶燃料として直接利用できるほか、SAFへ転換可能である。
さらに同社は、国内初となる大規模メタノール・トゥ・ジェット燃料施設も構想する。年間1億3,500万リットル超のSAFを生産可能とし、建設時に数百人、稼働後は最大130人の恒常雇用を見込む。航空燃料の国内自給率向上とエネルギー安全保障強化を狙う。
技術面では、米ハネウェル(Honeywell International)の子会社ハネウェルUOPがeFiningプロセス技術を提供する。これは再生可能メタノールからSAFを製造する商用ライセンスとして、太平洋地域初の事例となる。既存副産物を活用する垂直統合モデルにより、ライフサイクル排出量の低減とコスト競争力を両立させる設計だ。
国際航空運送協会(IATA)は、2050年の世界SAF需要が5億トンに達すると推計する。供給不足が続く中、豪州での大規模生産はアジア太平洋市場のカーボンクレジット創出源としても注目される。SAFはCORSIA(国際航空のためのカーボン・オフセットおよび削減スキーム)下で排出削減手段として認められており、国内生産はクレジット調達コストの抑制にも直結する。
カンタス航空のグループ最高サステナビリティ責任者フィオナ・メセント氏は「オーストラリア国内でのSAF供給構築は、航空の脱炭素目標達成に不可欠だ。国内産業の確立は雇用と地域投資を生む」と述べた。
エアバスの豪州・ニュージーランド・太平洋地域チーフ・レプレゼンタティブ、スティーブン・フォーショー氏は「メタノール由来SAFは産業の移行を加速させる有望な経路だ」と指摘した。
ティッセンクルップ・ウーデのナジャ・ホーカンソン最高経営責任者は「技術とプロジェクト遂行力を通じ、再生可能燃料の産業化を支援する」と強調した。
森林資源を活用したメタノール経由SAFは、電力由来e-fuelや廃食油系SAFと比べ原料安定性に優れる。長期供給覚書を結ぶワンフォーティワン(OneFortyOne)などとの連携により、持続可能な原料調達を担保する構想である。
豪州では今後、政府のLCLF支援制度の詳細設計と補助金配分が焦点となる。PRFの最終投資決定と商業化の進展は、2026年内の政策動向と連動する見通しである。
参考:https://www.hamrenergy.com/news/hamr-closes-series-a-media-releas
