グラウンドワーク・バイオアグ、米国で初の「インセッティング型CDR商業展開」 ベックスと提携し農家に土壌炭素収益の道

村山 大翔

村山 大翔

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イスラエルのバイオ農業企業グラウンドワーク・バイオアグ(Groundwork BioAg)は9月10日、米国大手種子会社ベックス・ハイブリッズ(Beck’s Hybrids)と提携し、同社が開発した菌根菌資材「ルーテラ(Rootella)」と炭素除去プログラム「ルーテラ・カーボン(Rootella Carbon)」を米国農家に提供すると発表した。両社はベックスが展開する「穀物属性プログラム」を通じて、農家が土壌炭素貯留に基づく収益を得られる仕組みを拡大する。

グラウンドワーク・バイオアグの最高成長責任者ダン・グロツキー氏は、「ルーテラ・カーボンは耐久的な二酸化炭素除去(CDR)を実現する世界初の菌根菌ベースのプログラムだ。今回の提携により、農家は炭素インセッティング需要、例えばサントリーなど海外の穀物購入者からの需要を収益化できる」と述べた。

すでに2025年シーズンから一部の農家がルーテラを使用して新たな収益機会を得ており、今後は段階的に対象を拡大する。ベックスの「穀物属性プログラム」は、農家が最終需要家の要望に応じてプレミアムを獲得できる仕組みであり、今回の合意により炭素インセッティングが新たな選択肢に加わる。

ベックス特別プロジェクトマネージャーのケント・グレメル氏は「我々の焦点は1エーカーごとの収益性向上だ。ルーテラ・カーボンを選択肢として農家に提供できることは大きな意義がある」とコメントした。

菌根菌は植物の根と共生し、栄養吸収を高め、収量を増やすと同時に、土壌に長期的な炭素貯留を可能にする。グラウンドワーク・バイオアグのルーテラ製品は、すでに米国、ブラジル、インド、中国を含む23カ国・550万エーカーで導入されている。初期の参加農家枠はすでに完売し、新規参加者向けにはウェイティングリストが設けられた。生成される炭素クレジットは厳格な測定・検証プロトコルに基づいており、サプライチェーン企業がネットゼロ目標達成に活用できる「透明で耐久性のあるクレジット」として提供される。

米国戦略アカウントディレクターのサッド・イングランド氏は「今回の提携は、生物学的イノベーションと市場アクセスを結びつけ、農家に生産性と収益性の新しい選択肢を提示するものだ」と強調した。

ルーテラ・カーボンプログラムでは、農家が自らの農地で炭素を固定し、任意市場において土壌由来の炭素クレジットを販売できる。参加農家はその販売収益の最大70%を受け取る仕組みだ。

グラウンドワーク・バイオアグは、農地を「炭素排出源から炭素吸収源へ」と転換させることを目標に掲げており、今回の米国展開は農業由来のCDR市場拡大に向けた重要な節目となる。

参考:https://groundworkbioag.com/groundwork-bioag-announces-first-commercial-insetting-deployment-of-durable-carbon-removal/