カーボンクレジット化を「移動」から実現 グリーンラインズ社、世界初の「モビリティ・カーボン・エンジン」特許をカナダで取得

村山 大翔

村山 大翔

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カナダの気候テック企業グリーンラインズ・テクノロジー(Greenlines Technology Inc.)は10月7日、移動行動をカーボンクレジットに変換する世界初の技術「モビリティ・カーボン・エンジン(Mobility Carbon Engine、MCE)」について、カナダ知的財産庁から特許(CA 3,132,053号)を取得したと発表した。同技術は2023年に米国でも特許(US 11,774,255 B2)を取得しており、北米両国での知的財産保護が整った形だ。

MCEは、モビリティアプリ内で利用者の移動データをデジタル計測・報告・検証(dMRV)する仕組みを提供し、低炭素な移動手段の選択による排出削減量を定量化する。これにより、アプリ運営者は検証済みのカーボンクレジットを生成し、新たな収益源とすることが可能になる。

同社の共同創業者兼CEOデービッド・オリバー氏は、「カナダ特許の取得は、MCEの普及に向けた重要な一歩だ。MCEは低炭素移動によって生じる削減量をカーボンクレジット化し、アプリ提供者に経済的インセンティブをもたらすdMRVソリューションだ」と述べた。同氏によれば、MCEと同社が開発した独自の温室効果ガス(GHG)定量化手法を組み合わせることで、モビリティアプリはカーボンクレジット販売を通じて新たな収益を得ると同時に、利用者に持続可能な移動行動を促すことができるという。

MCEは既にイスラエル発の世界最大手モビリティアプリ「ムービット(Moovit)」で実証済みだ。2024年には、ムービットの米国ユーザーの移動データを基にGHG削減量を算定し、カナダ規格協会(CSA)のクリーンプロジェクト・レジストリ(CleanProjects® Registry)で検証済みクレジットとして登録・発行することに成功した。

導入プロセスもシンプルで、アプリ運営者はグリーンラインズ社からMCEライセンスを取得し、同社の支援のもと独自の炭素プロジェクトを構築。国際カーボン・レジストリ(ICR)やCSAレジストリなど公認プラットフォームで登録することで、信頼性の高いカーボンクレジットを創出できる。生成されたカーボンクレジットは市場で販売可能であり、プレミアム会員料や広告収入など既存ビジネスを補完する新たな収益源になる。

グリーンラインズは今後、欧州連合(EU)を含む他地域でも特許出願を進める計画だ。同社は「モビリティとEコマースの双方からカーボンクレジット生成を民主化する」ことを掲げ、もう一つの主力技術「Eコマース・カーボン・エンジン(E-commerce Carbon Engine、ECE)」でも低炭素購買行動の可視化を進めている。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20251118453896/en/Greenlines-Technology-Secures-Canadian-Patent-for-Industry-First-Mobility-Carbon-Engine-MCE-Technology