グリーンランド産の氷河岩粉(Glacial Rock Flour)を活用した炭素除去(CDR)と持続可能な農業の実現を目指すデンマークのロックフラワー・カンパニーは9月8日、シード資金調達ラウンドで610万ユーロ(約10億円)を獲得したと発表した。主導したのはデンマーク輸出投資基金(EIFO)とノボ・ホールディングス(Novo Holdings)で、グリーンランドのベンチャーキャピタルのナリク・ベンチャーズ(Nalik Ventures)、SISA年金基金(SISA Pension Fund)、独カーボン・ドローダウン・イニシアチブ(Carbon Drawdown Initiative)などが参加した。既存投資家のトゥーディグリーズ(2degrees)やプラネタリー・インパクト・ベンチャーズ(Planetary Impact Ventures)も追加出資した。
同社はグリーンランドの豊富な氷河堆積物を利用し、農地を大規模なCO2吸収源に変えると同時に、農業に必要な天然の栄養素を供給することを目指している。今回の資金で現地事業を加速させ、商業パイロットや長期許可取得、研究開発を進める。
ロックフラワー・カンパニーの最高執行責任者(COO)、エリオット・ブース氏は「この投資でグリーンランドのオペレーションを加速し、世界的に通用する実証モデルを展開できる」と述べた。
氷河岩粉は氷床の重圧で岩盤が微粉末化され、夏の融水によって海岸に堆積する自然由来の超微粒子である。カリウムやリンを含む肥料成分を提供するとともに、土壌のpH調整や窒素利用効率の改善に寄与する。さらに重量の最大25%のCO2を吸収・固定するため、CDRの有力手段とされる。
同社によると、グリーンランドだけで年間数十億トン規模の堆積があり、温暖地域の農地に投入すれば急速に風化が進み、大気中のCO2を永続的に固定できる。EIFOの最高投資責任者エリック・バルク・ソレンセン氏は「農業を炭素吸収源に変える潜在力がある。世界規模での展開を支援したい」と強調した。
グリーンランドのナリク・ベンチャーズ暫定CEO、ピーター・クリスチャンセン氏は「地球規模の気候課題に挑むだけでなく、グリーンランド経済を根本的に強化できる」と述べ、地域振興への期待を示した。ノボ・ホールディングスも「長年支援してきた研究成果が事業化されつつある。農業の持続可能性向上に貢献できる」とコメントしている。
ロックフラワー・カンパニーは2023年に地質学者ミニク・ローシング教授と気候投資会社トゥーディグリーズ(2degrees)により設立された。今回の調達は、グリーンランドの資源を活用した持続可能な炭素除去技術が国際金融機関や地域投資家から高い関心を集めていることを示す。今後は商業パイロットの成果とともに、農業分野での実用化が焦点となる。