ギリシャ海底CO2貯留に欧州委「お墨付き」 年300万トン規模で東南欧の脱炭素拠点に

村山 大翔

村山 大翔

「ギリシャ海底CO2貯留に欧州委「お墨付き」 年300万トン規模で東南欧の脱炭素拠点に」のアイキャッチ画像

欧州委員会の気候行動総局(DG CLIMA)は、ギリシャ・エーゲ海カヴァラ沖の「プリノスCO2貯留プロジェクト」について肯定的評価を公表した。枯渇した海底油田を活用する同計画は、英エナジアン(Energean)傘下のエンアース(EnEarth)が推進しており、年間最大300万トンのCO2を地下貯留する東南欧初の本格的CCS(炭素回収・貯留)拠点となる見通しだ。欧州連合(EU)による技術的承認は法的拘束力を持たないものの、ギリシャ当局HEREMAによる最終許可審査を後押しする重要な節目となる。

欧州委の評価では、エンアースが提出した地質調査および技術研究がEU基準を満たし、長期的なCO2貯留に適していると結論づけられた。特に貯留層の動態把握や監視体制の設計が高く評価され、安全性とリスク管理の枠組みが確立されていることが確認された。エンアースのニコラス・リガス代表は「削減困難な産業セクターの脱炭素化において、プリノスが重要な役割を果たすことが改めて証明された」とコメントしている。

プロジェクトの総投資額は最大12億ユーロ(約1,920億円)に上り、既にEUから2.7億ユーロ(約432億円)の資金援助を確保したほか、欧州復興開発銀行(EBRD)からの追加支援も受けている。第1フェーズでは年間100万トンのCO2貯留を目指し、最終的には300万トンまで拡大する計画だ。エンアースは2024年7月にHEREMAへ許可申請を提出済みで、2030年の稼働開始を目標に据える。

同プロジェクトは東南欧全域の排出事業者に貯留サービスを提供する地域ハブとして位置づけられている。ギリシャは2040年までに温室効果ガス排出量を80%削減する目標を掲げており、セメント・化学・製鉄など削減困難セクターからのCO2を海底貯留することで、カーボンクレジット創出と実質排出削減の両立を図る狙いだ。欧州ではノルウェー北海やオランダ沖でCCSプロジェクトが先行するが、地中海東部での大規模CCS実現は初となる。

日本企業にとって、欧州CCS市場への参入機会が広がる事例だ。特に海底貯留技術や監視システムを持つエンジニアリング企業、CO2輸送船の造船・運航事業者にとって、東南欧地域は競争が比較的少ない新興市場となる。また日本国内でも苫小牧や新潟沖でCCS実証が進む中、欧州の先行事例から許認可プロセスや資金調達スキームを学ぶ意義は大きい。

参考:https://www.enearth.earth/press-release