Gold Standard、初のCORSIA適格クレジットを認証 マラウイ発の「クリーンクッキング」事業が国際航空業界の排出削減市場に参入

村山 大翔

村山 大翔

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国際的なカーボンクレジット認証機関ゴールドスタンダード(Gold Standard)は11月5日、航空業界の国際的排出オフセット制度「CORSIA」に適格と認められる初のカーボンクレジットを公式にラベル付けしたと発表した。パリ協定第6条に基づく国際協力を反映した初のケースであり、民間航空分野の気候対策市場における重要な節目となる。

対象となったのは、マラウイで実施されているヘスティアン(Hestian)による「バイオマスエネルギー効率化プログラム(GS11677)」である。農村地域の家庭に高効率かつ地元製造の調理用かまどを配布するもので、燃料使用量と室内汚染の削減に加え、女性や子どもが教育や就業に充てる時間を確保する効果がある。今回、同プロジェクトの発行した150万件超のゴールドスタンダード認証クレジットが、CORSIAの第1フェーズ(2024〜2026年)における適格単位として承認された。

マラウイ政府は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき、これらのカーボンクレジットに対応調整(Corresponding Adjustment)を適用した。これにより、同一削減量のダブルカウントを防ぎ、パリ協定の「一度だけカウントされる」原則を遵守している。

ゴールドスタンダードのマーガレット・キム最高経営責任者(CEO)は「この節目は、気候政策が人と地球の双方に実益をもたらすことを示すものだ。CORSIAを通じ、航空会社は排出削減と地域社会の生活改善を同時に実現するプロジェクトへ投資できる」と述べた。

また、ゴールドスタンダードは同時に、アーティオ(Artio)による新たな保険商品「CORSIAアジャストメント・カバー」を承認した。これは、CORSIAの要件に沿ったカーボンクレジットを発行する事業者向けのもので、リスク管理会社ハウデン(Howden)の評価を受けている。既存のオカ(Oka)、カーボン・インシュランス・カンパニー(The Carbon Insurance Company)、CFCアンダーライティングなどと並び、ダブルカウントリスクを軽減し、カーボンクレジットの完全性を確保する仕組みを提供する。

航空業界の国際航空運送協会(IATA)のサステナビリティ担当上級副社長マリー・オーウェン・トムセン氏は「マラウイ政府とゴールドスタンダード、ヘスティアン社がCORSIA適格単位を供給したことは、制度実装への強いコミットメントを示すものだ。より多くのホスト国が透明で流動的なカーボンクレジット市場形成に向け、早期に同様の措置を講じることを期待する」と述べた。

ゴールドスタンダードは先月、ジンバブエのクリーンクッキング事業に対して初の対応調整付きカーボンクレジットを発行しており、2026年からの全面的なパリ協定整合に向けたロードマップも公表済みである。今回のマラウイ案件は、アフリカ初のCORSIA適格プロジェクトとして、地域主導型の炭素除去・削減事業が国際的なカーボンクレジット市場へ参入する道を開いた。

CORSIAの第1フェーズは2024〜2026年に実施され、加盟航空会社は義務的な排出オフセットの一部として、こうした高品質カーボンクレジットの使用が求められる。今回の認証により、航空業界における信頼性の高いカーボンクレジット供給が拡大し、国際市場の競争環境にも新たな動きが生じるとみられる。

参考:https://www.goldstandard.org/news/first-project-approved-for-corsia