海洋炭素除去の信頼性強化 Gigablue、新型潜水ドローンでMRVを拡張

村山 大翔

村山 大翔

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米国の海洋炭素除去(mCDR)企業、ギガブルー(Gigablue)は9月18日、ニューヨークで独自開発の遠隔操作無人潜水機(ROV)を公開した。同社が進める微細藻類を利用した炭素固定・沈降手法(MCFS)の一環で、炭素が深海に安全かつ長期的に貯留されているかを検証する、測定・報告・検証(MRV)体制を強化する狙いがある。

新型ROVは水深500メートルまでの運用が可能で、従来の150メートルから大幅に拡張された。高解像度カメラや光学追跡装置を搭載し、炭素を含む基材の沈降速度や挙動をより正確に把握できる。また、多層サンプリングユニットにより、1回の潜航で異なる深度の粒子を採取することも可能となった。小型船からの投入が可能な設計と内蔵バッテリーにより、燃料消費と運用コストを削減する効果もある。

共同開発には水中ロボティクス大手アストラル・サブシー(Astral-Subsea)が参加し、ニュージーランドのシーワークス(Seaworks)は専用船を提供。さらにカーノハン・エンジニアリング(Kernohan Engineering)が基材投入用リングや浮標機材を供給している。ギガブルーの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のドタン・レヴィ氏は「世界の研究機関や産業パートナーと連携し、実海域での長期的な監視と検証を実現する」と述べた。

同社は2024年に水深150メートルまで対応する小型ROVで実証試験を行い、基材の沈降過程に関する知見を得た。その経験を踏まえ、今回の次世代機が設計された。新型ROVはすでにアカバ湾での試験を終えており、今後はニュージーランド排他的経済水域(EEZ)での運用を予定している。

アストラル・サブシーの創業者オデド・エズラ氏は「このROVは深海モニタリングをより手頃に、そしてアクセスしやすくする」と述べ、mCDRの拡大に向けた技術的意義を強調した。

ギガブルーは炭素を深海に長期固定する独自の基材を開発し、企業や各国のネットゼロ目標達成を支援している。今回の技術強化は、mCDRにおける透明性と信頼性を高める試みであり、今後の商用展開や国際的な認証制度の形成にも影響を与えるとみられる。

参考:https://www.globenewswire.com/news-release/2025/09/18/3152278/0/en/Gigablue-Strengthens-Deep-Sea-Monitoring-Capabilities-with-Custom-ROV.html