ロンドン拠点の非営利団体グローバル・イノベーション基金(GIF)は、炭素除去(CDR)技術コンテスト「XPRIZE」で5,000万ドル(約75億円)を獲得したマティ・カーボンと提携し、同社のCDR事業をアフリカおよびアジアの新興国へ拡大すると発表した。
マティ・カーボンはインドを拠点に、農地へケイ酸塩岩の粉末を散布する、岩石風化促進(ERW)を用いたCDRを推進している。雨水と反応した岩粉が大気中のCO2を固定化する仕組みで、生成した高品質のカーボンクレジットを市場で販売し、その収益を農家支援に充てるモデルを確立している。農家は無償で岩粉を受け取り、土壌改良と収量向上の恩恵を得られる仕組みだ。
GIFはこの資金循環モデルを評価し、マティがタンザニア、ザンビア、エチオピア、カメルーン、ベトナムで新規事業を立ち上げる際に、ESG基準やインパクト測定の導入を支援する。GIF助成部門マネージング・ディレクターのマルコム・スペンス氏は「カーボンクレジットを活用することで、農家は費用を負担せずに土壌改善と収量向上を享受でき、同時に大気中から恒久的に炭素を除去できる」と述べた。
マティのシャントヌ・アグラワルCEOは「GIFとの提携は単なる資金援助にとどまらず、ガバナンスやESG基盤を強化し、責任ある事業拡大を実現するための重要な一歩だ」と強調した。
マティは2030年代までに1億人規模の小規模農家をERWに取り込む目標を掲げており、GIFとの協働によってその基盤固めを進める構えである。