GE Vernova、シンガポールで初のCO2回収実証 YTL PowerSerayaと共同で「排出90%削減」目指す

村山 大翔

村山 大翔

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米エネルギー大手GEヴェルノバ(GE Vernova)は10月27日、マレーシア系電力会社YTLパワーセラヤ(YTL PowerSeraya)と共同で、シンガポール・ジュロン島に建設予定の水素対応型ガスタービン発電所における炭素回収(CCS)技術の実現可能性調査を開始したと発表した。両社は、シンガポールのエネルギー市場庁(Energy Market Authority、EMA)の共同資金支援を受け、発電時の二酸化炭素排出量の少なくとも90%を回収することを目指す。

この調査は、GEヴェルノバにとってシンガポールで初の炭素回収評価事業となる。プロジェクトは、出力60万キロワット(600MW)級のHクラス複合サイクルガスタービン(CCGT)を対象とし、ポストコンバッション方式(燃焼後回収)の炭素回収システムを発電所に統合する設計最適化を行う。GEヴェルノバは、排気ガス再循環(EGR)やスチーム統合、制御統合など3つの主要技術を組み合わせ、発電効率やコストへの影響を最小化する手法を検証する。

YTLパワーセラヤのジョン・ン最高経営責任者(CEO)は、「EMAから採択された本プロジェクトは、当社が運営するHクラス発電所の排出削減に向けた重要なステップだ。GEヴェルノバとともに、既存設備の脱炭素化と持続可能な電力供給に貢献したい」と述べた。

GEヴェルノバのアジア太平洋地域ガス事業プレジデント兼CEO、ラメシュ・シンガラム氏は、「この調査は、シンガポールの発電所における炭素回収の統合設計を進化させる第一歩であり、効率とコストの両面で新たな基準を築く」と強調した。

この事業は、EMAが2024年10月に開始した「電力セクター炭素回収・貯留助成プログラム」の一環として採択された5件のうちの1つである。調査結果は、2030年代以降に同国のガス火力発電所群へCCSを本格導入するための基礎データとなる見込みだ。

ジュロン島の発電所は2027年末までに稼働予定で、水素混焼にも対応する設計となっている。GEヴェルノバは、英テサイドで進行中の「ネットゼロ・テサイド(NZT)パワー」プロジェクトなど、商業規模でのCCS統合火力開発にも関与しており、今回の動きはアジア市場での展開拡大を示すものだ。

シンガポール政府は2050年までのネットゼロ達成を掲げ、電力部門の脱炭素化を重点政策としている。今回のGEヴェルノバとYTLパワーセラヤの取り組みは、同国におけるCCS導入の実証モデルとなる可能性が高い。

参考:https://www.gevernova.com/news/press-releases/ge-vernova-ytl-powerseraya-kick-post-combustion-carbon-capture-feasibility-study