ドイツが2045年ネットゼロ達成へ CO2除去の「野心的な拡大」が不可欠

村山 大翔

村山 大翔

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2月6日、環境団体のカーボン・ギャップ(Carbon Gap)とコンサルティング大手のスウェコ(Sweco Finland)は、ドイツの炭素除去(CDR)に関する準備状況を評価した最新報告書を共同発表した。

同報告書は、ドイツが2045年までのネットゼロを達成し、その後に「ネットネガティブ」へと転換するためには、CDR技術の急速な社会実装と強力な政策支援、そして迅速なインフラ整備が鍵を握ると結論づけている。

ドイツ炭素除去準備状況評価(CRRA)と題されたこの報告書は、同国が欧州におけるCDR分野のリーダーとしての地位を確立するために、今すぐ着手すべき行動を詳細にまとめた。著者は、ドイツがエネルギー効率を最優先し、バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)への過度な依存を抑える「高野心シナリオ」を採用すれば、2045年までに残存排出量を完全に相殺できると分析している。

一方で、現状維持に近い「低野心シナリオ」を選択した場合、年間の二酸化炭素(CO2)除去量は約4,700万トンにとどまると警告した。これは、ドイツ国内に存在する年間約2億5,800万トンという膨大な理論的潜在能力のわずか2割程度にすぎない。最大の除去効果を得るためには、バイオ炭やBECCS、強化風化(ERW)、植林など、技術的に可能なあらゆる手法を組み合わせた多様なポートフォリオの構築が求められる。

自然ベースの解決策と人工的な工学手法を組み合わせることで、エネルギー消費などの資源負荷を分散し、将来の市場や政策枠組みに対して柔軟性を持たせることが可能となる。しかし、最大の障壁となっているのは、CO2輸送パイプラインなどのインフラ要件と、直接空気炭素回収・貯留(DACCS)やBECCSのスケールアップに不可欠な地質学的貯留容量の不足だ。

報告書は、ドイツ政府に対し、大規模な産業政策への介入を加速させるよう強く求めている。CO2の輸送や貯留に関するインフラ投資が滞れば、回収技術だけが先行し、実際の社会実装ができないリスクが生じるためだ。

ドイツ政府は2026年度の連邦予算案において、CDRプロジェクトに約1億ユーロ(約160億円)、2033年までの累計で5億ユーロ(約800億円)の支援を盛り込むなど前向きな姿勢を見せているが、透明性の高い規制とグリーンウォッシュ防止策の確立が急務となっている。

今回の報告書は、ドイツが「技術はあるがインフラがない」というジレンマに直面していることを浮き彫りにした。

特筆すべきは、単なる技術論にとどまらず、CO2輸送という「物流」の問題を最大のボトルネックとして特定した点だ。ドイツが2026年度予算でCDRへの直接支援を明文化したことは、これまでボランタリー市場に頼っていたCDRが、ついに国家の基幹産業へと格上げされたことを意味する。

日本企業にとっても、欧州におけるCO2パイプライン構築や、高精度な計測・報告・検証(MRV)技術の提供は、今後数十年続く巨大な商機となるだろう。

参考:https://carbongap.org/deploying-cdr-in-germany/