GenZeroがBTG Pactualの森林再生戦略に出資 ラテンアメリカ最大級の自然回復プロジェクトが総額約972億円規模に

村山 大翔

村山 大翔

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10月28日、ブラジルの資産運用大手BTGパクチュアル・ティンバーランド・インベストメント・グループ(BTG Pactual TIG)は、シンガポールの政府系投資会社テマセク傘下の脱炭素化専門ファンド、ジェンゼロ(GenZero)からの出資を受け、ラテンアメリカにおける森林再生戦略の総投資規模を6億7,200万ドル(約972億円)に拡大すると発表した。
本戦略は、南米最大級の生態系再生プロジェクトとして、総額10億ドル超を投じて約27万ヘクタールの劣化地を回復・保全することを目指す。

BTG Pactual TIGの森林再生戦略は、生物多様性の保全と気候変動へのレジリエンス向上を目的とし、ブラジル中部のセラード(Cerrado)生態系に重点を置く。セラードは世界有数の乾燥地生態系で、アマゾンに次ぐ多様な生物を抱えるが、近年は牧草地化や農地拡大で大きく失われている。
同社はこれまでに約1.1万ヘクタールの原生植生地で回復作業を進めており、4万ヘクタール以上の連続した自然回廊を形成する計画だ。

プロジェクト全体では、最終的に13.5万ヘクタールの自然林と13.5万ヘクタールの持続可能な商業用植林地を整備する見込み。商業林は森林管理協議会(FSC)認証を取得し、持続可能な木材生産と炭素固定の両立を図る。また、直接・間接を含めて約2,700人の雇用を創出し、地域経済への波及効果も見込まれている。

ジェンゼロの投資部門ディレクター、フーン・リン氏は次のように述べた。
「BTG Pactual TIGおよびコンサベーション・インターナショナルと協働することで、自然生態系の回復を通じて高品質なカーボンクレジットを生み出し、ネットゼロ社会への移行を加速できる。地域社会に長期的なレジリエンスをもたらす取り組みだ」。

同プロジェクトには国際NGOのコンサベーション・インターナショナル(Conservation International)が科学顧問として参画し、科学的知見と社会的影響評価を支援する。同団体ブラジル支部の副代表マウリシオ・ビアンコ氏は「科学と金融の連携によって劣化地が再び生態的価値を取り戻している。持続可能な土地管理が経済成長と共存し得ることを実証している」と語った。

BTG Pactual TIGの最高サステナビリティ責任者、マーク・ウィシニー氏も「GenZeroの参画は、我々の再生戦略が気候・生物多様性・地域社会の利益を統合的に実現できることの強い裏付けだ」と述べた。

さらに、同戦略の一環として、BTG Pactual TIG、コンサベーション・インターナショナル、ヴィソーザ連邦大学(UFV)との共同研究により、セラード生態系で過去最大規模の再植林実験も計画されている。直播種、在来種の苗植え、自然再生など複数の手法の効果を比較し、ブラジル国内外の森林回復事業に資する科学的知見の提供を目指す。

今回の出資により、ジェンゼロは自社が推進する「自然を基盤としたカーボンソリューション」の中核として、BTGパクチュアルとの連携を強化する構えだ。再生林由来の高品質クレジットの発行は、グローバル市場での自発的炭素取引(VCM)においても注目を集める可能性がある。

参考:https://genzero.co/genzeros-investment-brings-btg-pactual-timberland-investment-groups-latin-american-reforestation-strategy-to-usdollar672-million/