米政府 「カーボンクレジット市場での連邦政府の関与は限定的」 信頼性確保に向けた対応巡り議論

村山 大翔

村山 大翔

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米政府説明責任局(GAO)は8月13日、ボランタリーカーボンクレジット市場に関する最新の報告書を発表した。企業や個人が温室効果ガス(GHG)の排出を相殺する目的で購入するカーボンクレジットについて、連邦政府の関与はこれまで最小限にとどまっており、今後の市場監督のあり方について専門家の意見が分かれていると指摘している。

カーボンクレジットは、森林保全や再生可能エネルギーの導入など、GHGを削減・除去するプロジェクトから発行される。GAOは、こうした市場が排出削減の手段として注目されている一方で、「カーボンクレジットが本当に環境効果を持つのか」「市場の透明性が不十分ではないか」といった懸念が根強いと報告した。

現在、商品先物取引委員会(CFTC)や財務省など一部の連邦機関は、市場に関する指針の作成や一定の支援を行っている。ただし、カーボンクレジットの質を保証するために政府が認証や規制を行うべきかどうかについては、GAOがインタビューした8人の専門家の間でも意見が分かれたという。

また、2023年に米国科学・工学・医学アカデミーが公表した報告書や、GAOの過去の調査でも「市場の信頼性向上のために規制を強化すれば、コストが上昇する」との課題が指摘されており、政府関与の是非には慎重な検討が求められる。

国際証券監督者機構(IOSCO)は2024年に、「市場の信頼性不足が成長を妨げている可能性がある」と警告しており、GAOも同様の問題意識を共有している。

GAOは報告の中で、「連邦政府が関与を強めるかどうかは政策判断に委ねられるが、市場の信頼性を確保することが今後の成長のカギとなる」と結論づけた。

参考:https://www.gao.gov/products/gao-25-107128