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ギャラガーとキタが提携、炭素除去プロジェクト向け業界初のリスクインテリジェンスサービスを開始

2026.05.01 読了 約4分
ギャラガーとキタが提携、炭素除去プロジェクト向け業界初のリスクインテリジェンスサービスを開始
出典:イメージ

世界有数の保険ブローカーであるギャラガー(Gallagher)は2026年4月27日、ロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd’s of London)の引受シンジケートに参加する炭素保険専業のキタ(Kita)と提携し、炭素除去(CDR)プロジェクトを対象としたリスクインテリジェンス・コンサルティングサービスを立ち上げると発表した。

両社は本サービスを業界初の取り組みと位置付けており、ボランタリーカーボンクレジット市場における与信判断の高度化を狙う。

炭素リスクを超えた事業全体の多面評価

新サービスの中核は、キタが炭素保険の引受業務を通じて蓄積した独自のリスク分析データを活用し、炭素除去プロジェクトの成立可能性と事業リスクを総合的に評価する点にある。従来のカーボンクレジット格付けが、主に方法論・永続性・追加性といった「炭素リスク」に焦点を当ててきたのに対し、本サービスでは取引相手の財務状況、ディールストラクチャー、経済的成立性、潜在的賠償責任、さらにホスト国の政治リスクまでを含む多次元の評価レポートを提供する。

特筆すべきは、CORSIAの適格性に影響しうる国別政治リスクの評価が組み込まれている点である。CORSIAは2019年をベースラインとし、それを超える国際航空のCO2排出について航空会社にオフセット義務を課す制度で、2050年のネットゼロ達成を目標としている。コンプライアンスカーボンクレジット市場と接続する出口戦略を見据えるバイヤーにとって、ホスト国リスクの精緻化は購買判断の鍵となる。

衛星データと機械学習でプロジェクト性能を継続監視

レポートのもう一つの特徴は、航空機・衛星によるリモートセンシング画像と機械学習を組み合わせ、現地のプロジェクト稼働状況を継続的に監視する仕組みにある。自然災害への露出、想定値からの乖離、早期警戒シグナルなどを把握できる構造で、要望に応じてポートフォリオ単位での集合的リスクビューも提供される。

ボランタリーカーボンクレジット市場ではMRV(測定・報告・検証)の整合化が依然として進行中であり、レジストリや方法論ごとに評価基準が分散している。第三者がデータ主導で継続検証を行う仕組みは、買い手と投資家の意思決定信頼性を高めるインフラとして機能しうる。

ギャラガーで気候戦略・炭素保険・パラメトリックソリューション部門責任者を務めるジェームズ・ボズレー(James Bosley)は、「これは業界初の取り組みであり、ボランタリーカーボンクレジット市場にとってのゲームチェンジャーだ。バイヤーや投資家がプロジェクトを深く理解するための実効的なデューデリジェンスを可能にし、プロジェクトオーナーには有効な実証手段を提供する」と述べた。

キタの最高技術責任者(CTO)兼共同創業者であるポール・ヤング(Paul Young)は、「ギャラガーのブローカーおよびアドバイザリーチームは、炭素除去業界全体のプロジェクトとポートフォリオのリスクを、データに基づき迅速に把握できるようになる」と説明した。

拡大する炭素除去市場と整合性課題が背景

サービス開始の背景には、ネットゼロ目標を掲げる企業の間で炭素除去カーボンクレジットへの需要が拡大している一方、検証基準やプロジェクトの整合性に関する疑念が根強く残るという市場構造がある。レジストリや格付け機関ごとに方法論が分散しており、企業の調達担当者は「どのカーボンクレジットが本質的価値を持つのか」という判断に苦慮している。

この空白を埋める存在として、CORSIAやコアカーボン原則(CCPs)を策定するICVCMといった準規制的フレームワークの重要性が高まっている。同時に、保険会社や金融仲介者がリスク評価機能を提供し、ボランタリーカーボンクレジット市場のインフラ中核を担う動きが顕在化しつつある。今回の提携は、その潮流を象徴する取り組みと位置付けられる。

なお、本サービスはギャラガーが既に提供する炭素保険サービスとは独立したアドバイザリーとして提供される。

参考:https://www.ajg.com/uk/news-and-insights/gallagher-and-kita-launch-risk-intelligence-consulting-for-carbon-removal-projects/

関連タグ CDR
カーボンクレジット.jp 編集部
カーボンクレジット.jp編集部|2023年末に当時日本初かつ唯一のカーボンクレジット専門情報メディアを立ち上げ。高度な専門性とわかりやすさを追求した翻訳力。