G20のCO2除去目標は遅れている オックスフォード大学研究者らが主要国の約束、排出削減補完策として不十分と指摘

村山 大翔

村山 大翔

「G20のCO2除去目標は遅れている オックスフォード大学研究者らが主要国の約束、排出削減補完策として不十分と指摘」のアイキャッチ画像

10月31日に公表された「State of Carbon Dioxide Removal Insight Report」によると、G20各国の炭素除去(CDR)関連の公約は、2035年に向けた気候目標を達成するには大幅に不足しているという。パリ協定の達成には排出削減と並行してCDRの拡大が不可欠だが、現時点でCDR量の数値目標を明示した国はわずかで、技術導入を具体的に示したのは英国のみである。

報告書は、主要排出国が気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を前に、排出削減中心の政策に偏りすぎていると指摘した。G20のうち、2035年目標を正式に更新しているのはオーストラリア、ブラジル、カナダ、日本、ロシア、英国、米国の7カ国にとどまる(2025年9月時点)。

多くの国が2030年または2050年までにどの程度のCDRを実施するか明示しておらず、G20全体の提案量は2030年時点で約2億1,400万〜2億6,500万トンのCO2除去にとどまる。これは現在、植林など陸上ベースの活動を中心に年間約20億トンのCDRが行われている現状から見てもわずかな増加にすぎない。

一方、前年に発表された「State of CDR Edition 2」では、2050年までに年間7〜9億トンのCDRを実現する必要があると試算しており、現行の取り組みはその目標から大きく乖離している。

国別に見ると、中国は2030年までに森林蓄積量を拡大し、約4,800万トンのCO2除去を追加する計画を掲げる。インドも森林・土地利用部門(LULUCF)の目標を上回る見通しだ。一方で、欧州連合(EU)は土壌吸収源目標の達成が危ぶまれており、日本、韓国、トルコでは現行のCDR水準が低下する見込みだという。

報告書では、G20各国のCDR実行力を「法的拘束力のあるネットゼロ目標の有無」「CDR拡大量に関する政策・施策」「セクター別の導入計画」の3点で評価。韓国、EU、英国の3者のみが基準を満たした。インド、中国、インドネシアといった潜在力の高い国々は、依然として詳細なCDR拡大計画を公表していない。

オックスフォード大学スミス・スクールのスティーブ・スミス博士は、「気候変動を止めるには、急速な脱炭素化と同時に炭素除去の拡大が不可欠だ。英国などの先行国はその両立が可能であることを示している」と述べた上で、「2050年までに数十億トン規模の除去を達成するには、2035年までにその道筋を明確にしておく必要がある」と強調した。

同報告書は、ドイツ国際安全保障研究所、ポツダム気候影響研究所、ウィスコンシン大学マディソン校、オックスフォード大学、メリーランド大学の研究者らによる共同研究である。著者らは今後5年間に政策基盤を整備し、CDRを排出削減策と並行して推進することが不可欠だと警鐘を鳴らしている。

参考:https://www.stateofcdr.org/insight-report-1