FrontierがCO2除去スタートアップ2社に約3.8億円を助成 脱炭素生石灰で海洋アルカリ化強化を支援

村山 大翔

村山 大翔

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炭素除去(CDR)の普及加速を目指す米国の企業連合フロンティア(Frontier)は2026年1月22日、イギリスのライラック(Leilac)とスウェーデンのソルトエックス(SaltX)の2社に対し、総額200万ドル(約3億800万円)の研究開発助成金を授与したと発表した。

この資金は、大気中や海洋からの二酸化炭素(CO2)回収を支える「脱炭素生石灰」の製造技術開発に充てられる。フロンティアは、将来的なCDRコストの低減と商業化の促進を狙う。

今回の助成は、ストライプ(Stripe)、グーグル(Google)、ショッピファイ(Shopify)などの加盟企業を代表して実施された。対象となる生石灰(クイックライム)は、CO2と反応して石灰石へと戻る性質を持ち、大気中の炭素を固体として長期間固定できる。

この特性は、海洋のアルカリ度を高めてCO2吸収能力を向上させる海洋アルカリ化強化(OAE)や、大気直接回収(DAC)といった次世代CDR技術の鍵を握っている。

しかし、従来の生石灰製造プロセス(焼成)は、石灰石の加熱時に原料由来のCO2を排出するため、極めて炭素集約的な工程であった。ライラックとソルトエックスは、電気加熱とプロセス由来のCO2を直接回収する革新的な電気焼成炉を開発している。これにより、製造工程での排出をほぼゼロに抑えた生石灰の供給が可能になるという。

ライラックのダニエル・レニー最高経営責任者(CEO)は「海洋アルカリ化強化は、海洋の健康を回復させ、ギガトン規模のCO2を大気から除去する莫大な可能性を秘めている」と述べた。さらに同氏は、フロンティアとの協力を通じ、セメントや石灰製造の低コスト化と脱炭素化を同時に進める意向を示した。

米国海洋大気庁(NOAA)の推計によれば、OAEは年間10億トンから150億トン以上のCO2を除去する潜在能力を持つ。しかし、その実現には原料となる生石灰自体がクリーンである必要がある。フロンティアは2030年までに10億ドル(約1,540億円)以上の永続的な炭素除去を購入することを約束しており、今回の助成はサプライチェーンの上流工程を支援することで、市場全体の成熟を促す狙いがある。

今後はライラックによるOAE用資材の試験提供や、低コストな脱炭素生石灰製造に向けたエンジニアリング調査が順次開始される予定である。

今回のニュースは、CDR市場が「回収技術そのもの」から「サプライチェーンの脱炭素化」へと視点を広げていることを示唆しています。

海洋アルカリ化強化(OAE)はポテンシャルが高い一方で、原料の生石灰製造でCO2を出してしまっては、カーボンクレジットとしての整合性が保てません。ライラックのような電気焼成技術は、既存のセメント産業の脱炭素化と、新興のCDR産業を橋渡しする重要なピースとなります。

日本のプラントエンジニアリング企業にとっても、この「脱炭素生石灰」のインフラ構築は大きな商機となるはずです。

参考:https://frontierclimate.com/writing/zero-carbon-lime-grants