Googleら4.6億円超のカーボンクレジットを「前払い購入」 海洋アルカリ化とCO2鉱物化の商用化を加速

村山 大翔

村山 大翔

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米フロンティア(Frontier)は2026年1月14日、グーグル(Google)、ストライプ(Stripe)、ショッピファイ(Shopify)ら加盟企業を代表し、次世代の炭素除去(CDR)技術を開発するスタートアップ2社と総額305万ドル(約4億6,000万円)の事前購入契約を締結したと発表した。

支援対象は、フランスのプロノエ(PRONOE)米国のセラ(Cella)で、革新的なCDR手法のパイロット事業拡大と技術的課題の解決を目的としている。

今回の決定は、新興企業が「死の谷」を越えて大規模な商用化へ進むための資金を供給する、フロンティアによる第6回目の事前購入ラウンドとなる。

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プロノエ(PRONOE)は、同団体のポートフォリオに初めて加わったフランス企業である。同社は、海水淡水化プラントや沿岸施設の排水処理システムに直接接続する、バンサイズの小型水処理ユニットを開発した。このユニット内で粉砕した石灰石を海水に溶解させ、アルカリ性の排水として海洋に放出することで、海洋酸性化を抑制すると同時に、海水の二酸化炭素(CO2)吸収能力を高める海洋アルカリ度向上(OAE)を実現する。

同社の手法は、電気を用いて排水を処理し安価な石灰石を溶かすことで、従来の石灰焼成プロセスや現地でのCO2貯留施設を不要とした点が最大の特徴だ。追加の巨大インフラを必要とせず、既存の沿岸インフラを有効活用できるため、低コストかつ迅速に世界各地へ展開可能な、拡張性の高い海洋CDR手法として期待されている。

一方、セラ(Cella)は、回収したCO2を地下深層の玄武岩層に注入し、化学反応によって安定した炭素塩の岩石へと変える地中炭素鉱物化(ISM)を専門とする米国企業だ。同社への支援は今回で2回目となる。今回の資金は、ケニアで開発中の大気直接回収(DAC)実証ハブにおいて、CO2注入容量を拡大するための2本目の注入井建設に充てられる。

セラのISM技術は、水の使用量を最小限に抑えつつ、簡素なオペレーションで多様なCO2回収ソリューションと組み合わせることが可能だ。地下で数百万年単位の長期貯留を実現する高い耐久性を持ち、地質学的な貯留に適した場所を世界中で開拓できるため、将来的にギガトン規模の炭素除去を実現する有力な候補と目されている。

これらの契約は、初期段階のスタートアップが設備投資資金を確保し、実稼働データを蓄積することで、将来的な大規模オフテイク(長期購入)契約の締結に向けた実績を作るための戦略的なステップとなる。フロンティアは、今回の前払いを通じてCDR手法の多様性を確保し、炭素除去市場全体の成熟を加速させる構えだ。

今回のニュースは、CDR市場において「事前購入(Prepurchase)」という仕組みがいかに重要な役割を果たしているかを再認識させるものだ。

特にプロノエ(PRONOE)のような海洋アルカリ化手法は、日本ではブルーカーボンとしての関心は高いものの、インフラコストが障壁となるケースが多い。既存の淡水化プラントを活用する「プラグイン型」のモデルは、島国であり沿岸インフラが豊富な日本企業にとっても技術提携や導入のヒントになるだろう。

また、ケニアで事業を展開するセラ(Cella)への継続支援は、地政学的な「適地」への投資が加速していることを示している。日本の商社やプラントメーカーも、国内だけでなく、ケニアのような地熱と玄武岩が豊富な地域でのCDR開発を、クレジット創出の柱として検討すべき時期に来ている。

参考:https://www.linkedin.com/posts/frontierclimate_frontier-has-facilitated-305m-of-carbon-activity-7416826812846174208-_nXV/?utm_source=share&utm_medium=member_desktop&rcm=ACoAACJyODUBET0A0SWxOoWDBVjMi7k7cWLEZDY