炭素除去(CDR)に特化した投資プラットフォームを運営するフォレストリー・リンクト・セキュリティーズ(Forestry-Linked Securities:FLS)と、エンジニアリング専門企業のデカルボエンジニアリング(DecarboEngineering)は2026年2月2日、パラグアイにおける脱炭素プロジェクトの展開に向けた戦略的提携を締結した。
両社は共同事業の第1弾として「プロジェクト・アルフヘイム(Project Alfheim)」を始動し、年間約2万5,000トンの二酸化炭素(CO2)を固定する計画だ。この事業を通じて、国際的な認証基準を満たす高品質なバイオ炭由来のカーボンクレジットの供給を目指す。
今回の提携で中核となる「プロジェクト・アルフヘイム」は、パラグアイ国内の廃棄物系バイオマス3万5,000トンを原料として活用する。
ハイチ・エンバイロメンタル・エナジー・グループ(Haiqi Environmental Energy Group)が開発した熱分解技術を導入し、年間約1万3,000トンの高品質なバイオ炭を生産する計画である。生成されたバイオ炭は、世界的な認証規格であるワールド・バイオ炭・サーティフィケート(World Biochar Certificate:WBC)を取得し、現地の農業農園で土壌改良材として活用される予定だ。
プロジェクト運営において、FLSはデベロッパー兼マネージャーとして事業構築と機関投資家レベルの基準に合わせた運用管理を担う。一方、デカルボエンジニアリングは炭素化バリューチェーン全体の技術的知見を提供し、最適な設計や技術選定、運用の検証を担当する。同社は高度な熱化学的バイオマス変換技術を強みとしており、システムが現地の提携工場に円滑に統合されるよう設計の妥当性を確認する役割を果たす。
FLSのマネージング・パートナーであるアレッサンドロ・マテルニ氏は「当社の事業開発能力とデカルボエンジニアリングの技術的な卓越性を組み合わせることで、同地域におけるバイオマス炭素化プロジェクトの新たなベンチマークを確立したい」と述べ、パラグアイ市場への最高水準の技術投入に自信を示した。
また、デカルボエンジニアリングの最高経営責任者(CEO)であるトーマス・ホフマン氏は、先進的なエンジニアリングと技術移転が地域の利害関係者に利益をもたらすと指摘した。同氏は「このプロジェクトは、バイオマスの廃棄物ストリームを測定可能な気候変動対策へと転換すると同時に、具体的な地域経済価値を生み出すことが可能であることを証明するものだ」と語った。
両社はすでにパラグアイ国内および新興市場における追加のプロジェクト展開に向けた評価を開始している。今後、数カ月以内に次なる展開の候補地が特定される見通しだ。
今回の提携は、バイオ炭による炭素除去が「実験段階」から「産業規模」へと移行している象徴的な事例といえる。
特に注目すべきは、中国の技術(ハイチ社)、欧州の投資・エンジニアリング、そして南米のバイオマス資源という、グローバルなサプライチェーンが構築されている点だ。
日本の事業者にとっても、パラグアイのようなバイオマス資源が豊富な国でのプロジェクトは、J-クレジット制度外での「高品質な海外クレジット」を確保する戦略的拠点になり得る。
バイオ炭は森林吸収系クレジットに比べて貯蔵の永続性が高いと評価されており、今後、マイクロソフトなどの大手テック企業による買い取り競争がさらに激化することが予想される。
日本企業は、こうした「技術と資源の結びつき」が固まる前に、技術パートナーシップや先行購入権の確保を検討すべき局面に来ている。


