フィンランド環境気候大臣サリ・ムルタラとノルウェー環境省政務次官アストリッド・ベルグモールは9月4日、コペンハーゲンで開催されたエネルギー閣僚の非公式会合において、二国間での二酸化炭素(CO2)越境輸送と恒久貯留を可能にする覚書(MoU)に署名した。これにより、フィンランドから排出されるCO2をノルウェー海域の海底下に輸送・地層貯留する道が開かれる。
今回の合意は、炭素回収・輸送・貯留(CCS)の分野における両国協力の大きな前進と位置付けられる。フィンランドは地質学的に恒久貯留に不向きなため、これまで国内での地中貯留は困難とされてきた。一方でノルウェーは28年以上の安全なCO2貯留実績を持ち、現在も大陸棚での商業的な貯留サービスの拡大を進めている。
ムルタラ大臣は「CO2回収の推進は政府の気候政策の重要テーマだ。今回のMoUは、大規模な炭素回収と越境貯留の実現に向けた重要な一歩だ」と述べた。ベルグモール政務次官も「ノルウェーは欧州のパートナーに対し、安全なCO2貯留ソリューションを提供する責務を持つ。今回の合意は気候目標の達成とCO2貯留の商業市場の発展を後押しする」と語った。
フィンランド政府は、産業排出源やバイオマス由来のCO2を対象に、技術的炭素吸収源(テクニカルシンク)の導入を支援している。国内では煙突直結型回収など複数のプロジェクトが進行中だが、回収したCO2の行き先としてノルウェーの貯留施設活用が現実的な解となる。
このMoUは、CO2の国際的な越境輸送と恒久貯留を規定する既存の国際協定を補完する枠組みであり、今後は欧州域内におけるCO2削減クレジット市場の形成にも波及効果が見込まれる。フィンランドとノルウェーの取り組みは、域内の他国が技術的炭素除去(CDR)とカーボンクレジット活用を拡大する際のモデルケースとなりそうだ。