リトアニア西部クライペダ港で計画中の二酸化炭素(CO2)集約ターミナルに対し、欧州連合(EU)は13日、予備的な技術・商業調査費用として総額3百万ユーロ(約5億円)を拠出すると発表した。資金はエネルギー・インフラ支援枠組み「CEF」から拠出され、運営主体KNエナジーズの調査コストの50%を賄う。バルト海を縦断する越境CCS網の要となる同ターミナルは、2027年末の最終投資判断(FID)、2030年の商業稼働を目指す。
KNエナジーズは12日、欧州委員会との助成契約に署名したと公表した。今回の資金は技術・環境影響・市場性の3評価に充当し、来年第1四半期に着手するフロントエンド工学設計(FEED)に接続する一次材料と位置付ける。
「本助成はバルト地域にCCSバリューチェーンを築く大きな一歩だ」とDarius Šilenskis最高経営責任者(CEO)は語り、「越境協調なくして気候危機は解決できない」と強調した。
ターミナルはリトアニアとラトビアのセメント・肥料など高排出産業から年間100万トン超のCO2を陸送で受け入れ、北海やデンマーク沖の地層へ海上輸送する計画だ。事業期間中に累計2,490万トンの排出削減効果が見込まれ、EUおよび両国の2050年ネットゼロ目標達成に寄与する。
2022年発足のCCSバルトコンソーシアムは、KNエナジーズのほかアクメネス・セメント社、ラルビク・シッピング社、商船三井、シュベンク・ラトビアなど5社が名を連ねる。パイプライン接続ではリトアニアのアンバーグリッド、ラトビアのコネクサス社が協力し、追加参加企業を募集中だ。
クライペダ計画は23年末、越境インフラを優先的に扱う「共通利益プロジェクト(PCI)」に指定され、域内送電線や貯蔵網と同列の戦略的重要性を獲得した。同じくPCIに位置付けられた英国「アコーン」計画(政府支援2億7千万ドル(約4,300億円))との連携を視野に、北海CCSハブへの統合も検討する。
今後は26年第1四半期のFEED結果を踏まえ、環境許認可と商業契約を並行協議する。EUは25年秋に次回CEF公募を予定しており、コンソーシアムは追加助成申請の可否を年内に判断する見通しだ。
参考:https://www.kn.lt/en/news/news/kn-energies-signs-grant-agreement-with-the-european-commission/9546