EU環境相会合 「2040年温室効果ガス90%削減」を法制化へ カーボンクレジット市場とCO2除去政策の新段階

村山 大翔

村山 大翔

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欧州連合(EU)の環境相は11月4日、ブリュッセルで開催された環境理事会で、欧州気候法の改正案について「一般的アプローチ(general approach)」の合意を目指した。改正案は、1990年比で2040年までに温室効果ガス(GHG)排出量を90%削減するという新たな中間目標を法的拘束力のある形で設定するもので、ポスト2030年の政策枠組みにおける炭素除去(CDR)とカーボンクレジット市場の扱いが焦点となる。

欧州委員会(European Commission)が提出した改正案は、2040年に向けた90%削減目標を中核に据え、加盟国が達成するための立法提案において反映すべき主要要素を明記している。これには、炭素回収・貯留(CCS)や直接空気回収(DAC)などのCDR技術、ならびにカーボンクレジット制度の統合的活用が含まれる見通しだ。

9月18日に行われた政策討議では、複数の加盟国が「除去ベースのクレジット(CDRクレジット)を排出削減と同等に扱う条件」や「EU ETSとの整合性」に懸念を示した。これを受け、10月23日に開催された欧州理事会は「競争力とグリーン移行(twin transition)の両立」を指針として提示し、気候法改正の政治的方向性を明確にした。

今回の理事会では、2040年目標に加え、2030年以降の国別貢献(NDC)の更新も議題となった。EUは国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づき、加盟27カ国を代表する単一のNDCを提出しており、11月10〜21日にブラジル・ベレンで開催されるCOP30に先立ち、改訂版を提出する見通しである。

NDCには排出削減だけでなく、森林吸収源やCDR技術の活用など、CDR努力が含まれる。EU環境相らは、カーボンクレジット制度を「透明性の高い形でNDCに統合する必要がある」との認識を共有した。特に、域内外のボランタリーカーボンクレジット市場を気候法の枠組みと整合させる方針が注目される。

今回の合意形成は、EUが2050年のカーボンニュートラル目標に向けて中間年次を明確に定義する試みであり、CDR関連企業やカーボンクレジット市場参加者にとって政策的な転換点となる。正式な採択は、年内の欧州議会審議後に行われる見通しだ。

参考:https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/env/2025/11/04/