欧州委員会は8月27日、域内での恒久的な炭素除去(CDR)の拡大に向け、需要喚起と資金調達の仕組みを提示する3本の報告書を発表した。気候行動総局(DG CLIMA)は、2025〜2030年を対象とするEU全体での購入プログラムの設計を検討しており、投資促進と技術開発を後押しする狙いがある。
報告書はデンマークのランボル・マネジメント・コンサルティング(Ramboll Management Consulting)と独エコロジック研究所(Ecologic Institute)が執筆した。
第1の報告書「恒久的炭素除去のためのEU購入プログラム:政策オプションの評価と短期設計の提言」では、EUがカーボンクレジットを戦略的に購入することで、市場形成と技術進歩を加速させる必要性を強調した。資金源としてはEU予算、加盟国拠出、民間投資を組み合わせ、イノベーション基金など既存制度との連携を図るべきだと指摘している。
また、本年5月21日に開催された「恒久的炭素除去クレジット(CRCF)購入プログラムに関する展望」ワークショップの議論も踏まえ、投資家の動機や制度設計の前提条件を整理した。
第2の報告書「EUにおける炭素除去:現行プロジェクトと初期段階資金調達のレビュー」は、2035年までのプロジェクトを網羅的に調査し、技術的課題、コスト、資金ニーズを分析した。第3の報告書「EU資金プログラムと新規資金モデルの評価」では、イノベーション基金やホライズン・ヨーロッパを含む既存支援策の限界を指摘し、早期段階のCDRを強化するための新たな金融スキームを提案した。
EUは2050年の気候中立達成に向け、CDRを排出削減と並ぶ柱と位置づけている。だが現状では需要不足が最大の障害となっており、今後数年での制度化が焦点となる。