欧州議会は2月11日、欧州連合(EU)の温室効果ガス(GHG)排出量を2040年までに1990年比で90%削減する目標を賛成413、反対226の賛成多数で可決した。
主要経済圏の中で最も野心的な中期目標の一つとなるが、焦点は削減手段の最大10%を国際カーボンクレジットで賄う柔軟性措置にある。加盟国の正式承認を経て発効する見通しだ。
今回可決されたEU気候法の改正案では、必要削減量の最大5%をEU域外のプロジェクトが発行するカーボンクレジットで達成することを認めた。さらに、必要に応じて追加5%を国際炭素市場から調達できる選択肢も残された。この国際カーボンクレジット活用枠は、移行コストへの懸念を示す複数の加盟国への政治的配慮として盛り込まれた形だ。
一方、環境団体は海外カーボンオフセットへの依存に強く反発している。「責任を欧州外に転嫁するもので、域内での排出削減加速を阻害する」と批判の声が上がる。削減義務の10%を国際市場に委ねることで、EU域内のクリーンテック産業や炭素除去技術(CDR)への投資が減速するリスクも指摘されている。
EUは2023年時点で既に1990年比37%の削減を達成しており、主要排出国の中で先行している。EU気候担当のウォプケ・ホークストラ(Wopke Hoekstra)氏は最近、「我々は世界排出量のわずか6%に過ぎない」と述べ、他の主要経済国に同水準の野心的目標を求めた。
今回の決定では、道路輸送と建物暖房を対象とする新たな排出権取引制度「ETS2」の開始時期も、複数加盟国の圧力を受けて2028年へと1年延期された。産業界からは移行期間の確保を評価する声がある一方、気候対策の先送りだと懸念する意見も根強い。
国際カーボンクレジット市場は、パリ協定第6条のもとで2024年以降に本格稼働が始まった段階にある。
EUが最大10%の削減を域外カーボンクレジットで充当する方針を示したことで、アフリカや東南アジアの再生可能エネルギープロジェクトや森林保全事業への資金流入が加速する可能性がある。一方で、カーボンクレジットの品質管理やダブルカウント防止など、制度の透明性確保が課題として残る。
国際カーボンクレジット市場の拡大は、日本企業にとって二つの商機を生む。一つは途上国でのCDRプロジェクト開発への参画、もう一つはカーボンクレジット検証・認証サービスの提供だ。EUが求める高品質基準に対応できる技術と知見を持つ企業には、欧州市場への参入余地が広がるだろう。
参考:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/speech_26_382
