炭素除去(CDR)とグリーン水素の製造を同時に行う技術を持つ米スタートアップ、エクアティック(Equatic)が、シリーズA資金調達で1,160万ドル(約17億円)を集めた。今回の資金は、カナダに建設予定の商用CDR(炭素除去)施設の設計作業などに使われる。
出資を主導したのは、シンガポールのテマセク・トラスト(Temasek Trust)が運営する「Catalytic Capital for Climate and Health(C3H)」と、クライメートテックに特化した投資会社、キボ・インベスト(Kibo Invest)。両社は、エクアティックの「CO2除去とクリーン水素製造を両立する」独自技術に高い将来性を見出している。
エクアティックは2023年に設立され、これまでにロサンゼルスとシンガポールで試験施設を運用してきた。今後は、シンガポールでの実証プラント「Equatic-1」や、カナダで計画中の年間10万トンのCO2を処理する商用施設に事業を拡大する。
同社の技術は、海水を電気分解してCO2を吸収・固定しながら、同時に水素を生産できる仕組み。エネルギーやインフラ分野における脱炭素のカギとして注目されている。
2024年には、アメリカで酸素選択性アノード(OSA)の自社製造を始め、コストや供給体制の強化にも取り組んでいる。
エクアティックはまた、CDRの透明性と信頼性を高めるために、国際規格ISO-14064に基づいた独自のモニタリング・報告・検証(MRV)基準を導入。この基準は、Puro.earthとIsometricという主要なCDRレジストリにより認証されており、ボーイングなどの大企業が同社のカーボンクレジットを購入している。
「エクアティックの技術は、CO2を除去しながら水素もつくるというユニークな仕組みで、コストと拡張性の両方に優れている」と、アドバイザリーボード会長で元BP CEOのジョン・ブラウン卿は語っている。
今回の資金調達により、エクアティックはカナダでの商用施設建設やシンガポールでの実証拡大など、大型プロジェクトを本格化させる。次の焦点は、2025年内の施設着工と、CDR由来のカーボンクレジットの販売拡大にある。