「カーボンニュートラル」製品巡る法的決着、顧客40万人に謝罪

村山 大翔

村山 大翔

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EnergyAustralia、グリーンウォッシング訴訟で謝罪と和解

オーストラリアの大手電力会社EnergyAustraliaは、5月19日、気候保護団体Parents for Climateから提起された「グリーンウォッシング」訴訟について和解に応じ、カーボンオフセット製品「Go Neutral」の販売方法に関して約40万人の顧客に謝罪した。同社は、カーボンオフセットによって化石燃料の使用による環境負荷を「打ち消す」ことはできないと公式に認めた。

本件は、企業の「カーボンニュートラル」主張を巡る豪州初の法的争点として注目されていた。EnergyAustraliaは、2023年に提起された訴訟を経て、今年3月に「Go Neutral」の新規受付を停止。6月まで既存顧客へのサービス提供を終了する方針を示していた。

同社は和解声明で、以下の点を明確に認めた。

  • 「Go Neutral」に加入しても、顧客の電力は主に化石燃料由来であること
  • カーボンオフセットは、化石燃料の燃焼による気候変動への影響を防げないこと
  • 植物に炭素を貯蔵する行為は、化石燃料を燃やさないこととは同等でないこと
  • 「カーボンニュートラル」マーケティングには消費者を誤解させる恐れがあること

エナジーオーストラリアの顧客責任者ケイト・ギブソン氏は、「カーボンオフセットにより、脱炭素の取り組みを遅らせるべきでない」とし、同社の説明が不十分だったことを認めた。

Parents for ClimateのCEOニック・セトン氏は、「この和解は、企業によるグリーンウォッシングへの終止符を打つ歴史的な前進」とコメント。「カーボンオフセットに頼るだけでは環境保護にならない」とし、連邦政府にもカーボンニュートラル認証制度「Climate Active」の見直しを求めた。

弁護士デビッド・ハーツバーグ氏も、「企業は環境主張の信頼性を真剣に検討すべき時代」と語り、今回の結果が企業行動の新たな基準になることへの期待を示した。

本件は、欧州での「カーボンニュートラル」表現禁止やKLMの誤認判決など、国際的な動向とも合致しており、カーボンオフセットへの依存からの転換を促す契機となる可能性がある。

参考:https://www.parentsforclimate.org/landmark_greenwashing_legal_case