英廃棄物発電へのCO2回収導入が加速 Encyclisが大型施設で建設許可を取得

村山 大翔

村山 大翔

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英国の廃棄物発電大手エンクリス(Encyclis)は12月23日、イングランド東部ベッドフォードシャー州のルーカリー・サウス廃棄物エネルギー回収施設(ERF)において、フルスケールの炭素回収プラントを建設するための計画許可を取得したと発表した。

地元自治体のセントラル・ベッドフォードシャー評議会が、既存施設に隣接する土地への回収ユニットおよび関連インフラの建設を承認した。今回の決定は、英国の廃棄物セクターにおける脱炭素化を推進する同社にとって、規制上の重要な節目となる。

今回の認可は、エンクリスが2025年10月にエネルギー・セキュリティ・ネットゼロ省(DESNZ)との間で、チェシャー州プロトス施設における英国初のフルスケール炭素回収設備に関する最終投資決定(FID)に合意した流れを汲むものである。

ルーカリー・サウス施設は、同社がミッドランズ地方で展開する「ミッドランズ・クラスター」において、炭素回収機能を備えた2番目の拠点となる。同社はこの地域を、炭素回収・貯留(CCS)技術をスケールアップさせるための中心拠点と位置づけている。

ルーカリー・サウス施設は、すでに廃棄物セクターにおける英国初の炭素回収実証プラントの一つを稼働させており、2022年1月の開業以来、累計200万トンの廃棄物を処理してきた。計画されているフルスケールのシステムでは、廃棄物焼却時に発生する煙道ガスから二酸化炭素(CO2)を直接回収する。回収されたCO2の輸送および長期貯留ソリューションについては、現在も詳細の策定が続けられている。

エンクリスの最高経営責任者(CEO)であるマーク・バロウズ=スミス氏は「ルーカリー・サウスの計画許可の確定は、廃棄物処理の脱炭素化という業界をリードする我々の使命における新たな節目である」と述べた。同氏は続けて、プロトス施設と合わせて、ミッドランズ地域全体の事業から排出される化石燃料由来のCO2量に相当する規模の回収を行うための、十分な法的許可を確保したと強調した。

ルーカリー・サウス施設は年間最大65万7,000トンの廃棄物を処理し、英国の送電網(ナショナル・グリッド)に対して約60メガワット時(MWh)のベースロード電力を供給する能力を持つ。同社は、廃棄物に含まれるバイオマス成分(生ごみや紙類など)に由来する炭素を回収することで、大気中から実質的にCO2を取り除く「炭素除去(CDR)」の創出が可能になるとの見解を示している。

英国政府は、排出削減が困難なハード・トゥ・アベート部門における気候変動目標の達成に向け、CCSの導入を不可欠とみなしている。2025年に入り、複数の大型プロジェクトで最終投資決定が相次いでおり、廃棄物発電部門は英国の気候政策がいかに迅速に産業インフラへと転換されるかを測る試金石となっている。

今回のルーカリー・サウス施設におけるCCS導入の進展は、単なる「排出削減(削減クレジット)」の枠を超え、高品質な「炭素除去(除去クレジット)」の供給源として廃棄物発電(EfW)が台頭していることを示唆している。

特筆すべきは、廃棄物に含まれるバイオマス成分由来のCO2回収だ。これはバイオエネルギー炭素回収貯留(BECCS)と同様のメカニズムであり、大気中の炭素を純減させる「ネガティブエミッション」を創出する。

日本国内においても、ゴミ焼却施設の脱炭素化は喫緊の課題だが、英国のように「CCS付き廃棄物発電」をCDRの創出手段として明確に位置づける動きは、今後の国内クレジット市場やJ-クレジットの制度設計に大きな影響を与える可能性がある。

参考:https://www.encyclis.com/news/encyclis-secures-planning-permission-for-carbon-capture-at-rookery-south-erf/