エジプト金融規制庁(FRA)は2026年2月15日、資本金または純資産が1億エジプト・ポンド(約3億1,000万円)を超えるすべての非銀行系金融機関(NBFI)に対し、温室効果ガス(GHG)排出量の測定と開示、およびその20%以上のカーボンオフセットを義務付ける「2026年第36号決議」を施行した。これは、同国のボランタリーカーボンクレジット市場を活性化させ、金融セクターの脱炭素化を加速させる強力な法的枠組みとなる。
排出量の20%を国内市場で強制オフセット
今回の規制により、対象となる保険会社、リース会社、消費者金融などの非銀行系金融機関は、自社の直接排出(Scope1)およびエネルギー起源の間接排出(Scope2)を毎年算出し、当局に報告しなければならない。
特筆すべきは、報告された排出量のうち最低20%について、FRAが監督する国内のボランタリーカーボンクレジット市場から「炭素削減証明書(カーボンクレジット)」を購入して相殺(カーボンオフセット)することが義務付けられた点だ。この義務を履行しない場合、営業免許の維持・更新が認められないという極めて厳しい罰則規定が設けられている。
2026年6月に初回報告、国際基準S1・S2に準拠
モハメド・ファリード投資・対外貿易相は、「エジプトはサステナビリティの概念を理論から実務へと移行させた」と述べ、この規制が国際財務報告基準(IFRS)財団によるサステナビリティ開示基準(S1、S2)に沿ったものであることを強調した。
- 報告期限
初回の義務的報告は2026年6月末まで。以降、各社の会計年度末に合わせて毎年提出する。 - 購入期限
排出量報告の提出から90日以内にカーボンクレジットを購入・償却しなければならない。 - 検証体制
報告データは、FRAが認定した8つの検証・認証機関による妥当性確認を受ける必要がある。
供給側の準備と市場への影響
現在、エジプトの国内炭素市場には34の登録プロジェクトから約17万トンのカーボンクレジットが供給されている。今回の義務化により、これまで限定的だった国内カーボンクレジットへの需要が強制的に創出されることになる。
エジプト政府はこの動きを通じて、国内の排出削減プロジェクト(再生可能エネルギーや省エネ、CDRなど)への資金流入を促し、低炭素経済への移行を金融面から支えるエコシステムの構築を狙う。
| 項目 | 規制の詳細内容 |
| 対象企業 | 資本金または純資産が1億EGP(約3.1億円)超のNBFI |
| オフセット義務 | 年間総排出量の20%以上 |
| 対象範囲 | Scope1およびScope2(要・第三者検証) |
| 初回デッドライン | 2026年6月30日 |
| 遵守条件 | 営業免許継続のための必須条件 |
エジプトが「カーボンオフセットを免許維持の条件」としたことは、世界の炭素市場にとって重要な転換点だ。
これは、ボランタリー市場の取り組みを実質的なコンプライアンス市場へと変貌させる。現地に進出する日本企業、特に金融・サービス関連の拠点を持つ企業は、早急に国内カーボンクレジットの調達ルートを確保する必要がある。
今後、このモデルが他の新興国へ波及し、地域の炭素価格を押し上げる要因となるだろう。
