米国の森林投資・運用会社EFMインベストメンツ&アドバイザリー(EFM Investments & Advisory)、再造林企業マスト・リフォレステーション(Mast Reforestation)、カーボンクレジット仲介のアニュー・クライメート(Anew Climate)の3社は、米オレゴン州クラッカマス郡で実施したヘンリークリーク再造林プロジェクトから、575,861トンの除去系カーボンクレジットを発行したと発表した。第三者検証機関による独立検証を経て、Climate Action Reserve(CAR)が認証した。
対象地は2020年に発生したビーチー・クリーク火災で焼失した約891エーカーのダグラスファー林であり、火災により周辺の母樹と種子源が壊滅し自然回復が困難と判定された地域である。EFMとマストは火災翌年から共同で再造林に着手し、マストが独自開発したドローン播種技術により300エーカーに120万粒以上の種子を散布、その後2年間で従来手法による825,000本の苗木植栽を組み合わせるハイブリッド方式を採用した。
本件は、CARの Climate Forward Reforestation Methodology v2.0 を適用した初期案件のひとつである。
特筆すべきは、CAR方法論下で初めて永久保全地役権(perpetual conservation easement)を併用した点である。地役権はセンター・フォー・ナチュラル・ランズ・マネジメント(Center for Natural Lands Management)が保有し、対象地は将来の伐採・分譲・開発から法的に保護される。除去系カーボンクレジットの核心要件である永続性を、土地利用権の制度的拘束によって担保する設計となっている。
早期段階の資金は、ショッピファイ(Shopify)やアーバー・デー財団(Arbor Day Foundation)等のバイヤーが事前購入の形で提供した。植林活動の立ち上げ資金が早期バイヤーによって賄われ、検証後にカーボンクレジットが引き渡される構図であり、ボランタリーカーボンクレジット市場における資金供給機能が機能した事例である。アニュー・クライメートが早期資金調達の取りまとめを担い、現在も一部のカーボンクレジットが同社を通じて販売継続中である。
もっとも、山火事跡地での再造林カーボンクレジットには、気候変動下で山火事頻度が増加する地域における永続性リスクという論点が残る。地役権は人為的開発を制限するが、自然災害リスクを排除するものではない。
本件は、自然由来カーボンクレジットの信頼性を構造的に底上げする設計事例として位置づけられる。除去系カーボンクレジットの市場では、技術由来(DACCS、BECCS、ERW等)の永続性と測定精度が優位とされ、自然由来側は永続性・追加性の脆弱さが論点となってきた。本件はCAR方法論と永久保全地役権の組み合わせにより、土地利用権レベルで永続性を担保する設計を導入しており、自然由来カーボンクレジットの品質設計に新たな選択肢を示した。
ショッピファイらが事前購入で植林資金を提供し、検証後にカーボンクレジットが引き渡される構造は、プロジェクト立ち上げ期のキャッシュフロー欠如という自然由来案件の構造課題に対する一つの市場的応答である。ボランタリーカーボンクレジット市場が単なるカーボンクレジット売買の場ではなく、初期資金供給チャネルとして機能し得ることを実証する事例である。