CarbonfutureとResidualが連携、メスキート駆除と文化再生も兼ねるバイオマス利活用の最前線
カーボンクレジット市場における新たなメガプロジェクトが、オーストラリア西部で始動した。CarbonfutureとResidualが共同で推進する「Mardie charプロジェクト」は、2028年までに年間50万トンのCO2を除去するバイオ炭ベースのCDR事業として、世界最大級のスケールを誇る見通しだ。
本プロジェクトでは、オーストラリア広域で猛威を振るう外来植物「メスキート(mesquite)」をバイオ炭として炭化処理することで、GHG恒久的に固定。加えて、干上がった地下水の回復と先住民が大切にしてきた文化的土地の再生にも貢献する、まさに「環境 × 社会 × 文化」を統合したカーボン除去モデルとなっている。
Carbonfutureの「MRV+」が支える信頼性と透明性
このプロジェクトの特徴は、Carbonfutureが提供するデジタルMRV(測定・報告・検証)サービス「Carbonfuture MRV+」を採用している点にある。カーボン除去からクレジット発行までの全プロセスをブロックチェーンベースで一元管理し、第三者認証(Puro.earthによるPuroスタンダード)をスムーズに実現する仕組みだ。
「本規模のプロジェクトでは、リアルタイムでの正確なデータ管理と認証が不可欠」と語るのは、Biomass ProjectsのCEOリチャード・パターソン氏。「Carbonfuture MRV+の導入により、我々はグローバルなクレジット購入者の求める品質基準を確実に満たすことが可能になった」と評価している。
Residualが裏で支えるオフテイク戦略と投資モデル
プロジェクト開発には、Residualがオフテイク契約、カーボンクレジット評価、保険スキームの統合という形で参画している。かつてマイクロソフトやグーグル向けのCDR戦略を支援してきた同社は、今回のプロジェクトにおいても、ファイナンスと市場戦略の両面で要となっている。
Residual共同創業者のテッド・クリスティー=ミラー氏は「このプロジェクトは、バイオ炭の経済的可能性を最大化しつつ、地域生態系の回復にも資する象徴的なケース」と強調。使用されるメスキートバイオマスは本来焼却される運命にあったが、それを価値ある炭素除去資産に変換することに成功したと述べている。
メスキート除去で水位回復、アボリジナルの聖地再生へ
環境・経済インパクトに加え、文化的意義も本プロジェクトの核心をなす。300,000ヘクタール超の土地を覆い尽くしているメスキートは、鋭いトゲを持ち、在来植物を圧迫し、地下水を11億㎥/年消費することで地域生態系を破壊してきた。
その除去と土地再生により、アボリジナルの人々が祖先の聖地にアクセスし、文化的アイデンティティを回復する道も開かれつつある。
Carbonfutureは本プロジェクトで創出されるクレジットのマーケットアクセスも担当。すでに複数の主要CDRバイヤーから関心が寄せられており、アジア太平洋地域におけるCDR拠点としてオーストラリアのポテンシャルが高まっている。
「クレジットの信頼性とスケーラビリティを両立させることが、気候変動対策の鍵だ」とCarbonfuture CEOのハネス・ユンジンガー=ゲストリッヒ氏。今後の拡張により、本プロジェクトはグローバルCDR市場における中核的存在となるだろう。
このプロジェクトの進展は、気候変動対策において「自然に基づく解決策(NbS)」の役割がいかに多面的であるかを改めて示している。環境、経済、文化、そしてカーボン市場という4つの視点からのインパクトが、今まさにオーストラリアの広野で形になろうとしている。
参照:https://www.carbonfuture.earth/magazine/turning-invasive-plants-into-climate-action-carbonfuture-mrv-to-track-australias-landmark-biochar-carbon-removal-project-at-half-a-million-tonnes-annually