6月25日、カナダの排出削減技術企業dynaCERT(ダイナサート)は、ディーゼルエンジン向けの水素混合装置を開発・販売する事業に対し、非ブローカード方式で500万カナダドル(約5億5,000万円)の資金調達を完了したと発表した。同社の技術はVerra認証クレジットの取得も視野に入れており、カーボンクレジット市場での展開が注目される。
カナダ・トロントに本拠を置くダイナサートは、上場企業向けのLIFE(Listed Issuer Financing Exemption)制度を活用し、1単位あたり0.15カナダドルの価格で3,333万単位の新株とワラントを発行。調達した資金は、水素製造装置HydraGEN™と排出モニタリング用のHydraLytica™テレマティクスの商用展開に充てられる見通しである。
HydraGEN™は、特許取得済みの電気分解技術により水素と酸素をオンデマンドで生成し、これをディーゼルエンジンの空気吸入口に供給することで燃焼効率を高め、炭素排出を抑制する。同社はこれらの装置により、将来的なカーボンクレジットの取得と販売を視野に入れている。
CEOのマレー・ジェームズ・ペイン氏は「当社の技術は、既存の内燃機関の環境負荷を低減しながら、水素経済への移行を橋渡しするものだ」と述べた。
ダイナサートの排出削減手法は、Verraが管理するボランタリーカーボンクレジット市場における認証手続きの対象となっており、今後のカーボンクレジット発行による収益化が期待されている。これにより、重機や物流トラックなど既存の大型ディーゼル機器を保有する事業者に対し、低炭素化と同時に経済的インセンティブを提供することが可能となる。
なお、今回の資金調達はトロント証券取引所の承認など複数の条件を前提としており、全ての手続き完了後に正式なクロージングが行われる。
同社は、北米を中心に鉱業、建設、林業など排出量の多い産業セクターとの連携を強化しており、日本を含むアジア市場への技術提供も検討している。
今後、カーボンクレジット認証の進展と商用契約の獲得状況により、同社のVCMにおけるプレゼンスが大きく左右される見通しである。