商業規模のCO2貯留を本格始動 デンマーク政府CCS事業の「グリーンサンド」へ初の事業認可

村山 大翔

村山 大翔

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2026年1月6日、デンマーク政府は北海の海底下に年間最大240万トンの二酸化炭素(CO2)を貯留する「グリーンサンド(Greensand)」プロジェクトに対し、国内初となるフルスケールの貯留ライセンスを付与した。

アイネオス(Ineos)が運営する本事業は、実証段階から商業展開への転換点となり、欧州全域を対象とした炭素除去(CDR)サービスの提供を視野に入れる。今回の認可は、明確な規制枠組みと初期のインフラ投資に裏打ちされたものであり、デンマークが欧州の二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)ハブとして機能するための重要な一歩となる。

貯留事業の基盤となるインフラ整備も加速している。専用のCO2輸送船がすでに稼働しているほか、エスビアウ港ではCO2ターミナルの建設が進む。これらの要素が組み合わさることで、CO2の回収、輸送、圧入までを網羅したデンマーク初の統合サプライチェーンが構築される。欧州でCCUSの機会を検討する国際企業にとって、共有型インフラを中心としたデンマークの事業モデルは、個別最適ではない効率的な解決策の先行事例となる。

デンマーク国内では、グリーンサンド以外にも複数のコンソーシアムが陸上および海上での貯留サイト開発に向けた調査を進めている。近々、2〜3件の近海調査ライセンスが新たに発行される見通しだ。現在開発中の総貯留容量はデンマーク国内の排出量を数倍上回っており、同国は自国の需要のみならず、国境を越えた貯留ニーズにも対応する準備を整えている。

既存のバイオガス施設や地域熱併給発電所、産業セクターにおける高いCO2回収ポテンシャルも、デンマークの強みを支える。国営インフラ事業者のエビダ(Evida)などは、港湾と排出源、貯留サイトを結ぶパイプライン網の構築を検討しており、長期的なインフラ計画を官民協働で推進している。

対デンマーク投資(Invest in Denmark)によれば、貯留事業のみならず、大気直接回収(DAC)や生物学的プロセスを用いた炭素利用、建築材料へのCO2固定化といった関連分野への投資家関心も高まっている。プロジェクトの成熟と市場環境の整備に伴い、バリューチェーン全体で新たなビジネス機会が創出される見込みだ。

デンマークの今回の決定は、欧州における「炭素除去のコモディティ化」を象徴する動きだ。これまで実証段階に留まっていたプロジェクトが、政府による正式な事業認可を得て商業フェーズに移行した意義は大きい。特に、国内排出量を大幅に上回る貯留容量の確保は、デンマークが「欧州のCO2ゴミ捨て場」ではなく、「炭素管理のプラットフォーム」としてリーダーシップを握ろうとする戦略的な意図が透けて見える。

この動きは「高品質な除去系クレジット」の供給安定化に直結する。北海という信頼性の高い貯留場所が商用化されることで、クレジット購入を検討する企業にとっての不確実性が低減されるからだ。日本企業にとっても、欧州拠点での排出対策や、現地のCCS・CDR技術への参画を検討する上で、デンマークのインフラ整備状況は極めて重要な指標となるだろう。

参考:https://investindk.com/insights/from-seabed-to-business-case-denmarks-ccus-ecosystem-is-ready-to-scale