カナダの炭素除去プロジェクト開発企業ディープスカイ(Deep Sky)は10月9日、マニトバ州南西部に世界最大級の炭素除去(CDR)施設「ディープスカイ・マニトバ」を建設する計画を発表した。総投資額は約5億ドル(約760億円)に達し、年間50万トンのCO2を除去できる能力を持つ施設として2026年に着工する予定だ。
今回の発表は、今夏に同社がアルバータ州で稼働を開始した初の拠点「ディープスカイ・アルファ」に続くもので、同社の大型プロジェクト群の一環である。マニトバ州南西部は、広大なCO2貯留地層、再生可能エネルギー、気候技術を重視する政策環境を備えており、CDR産業の展開に理想的な条件を備える。
ディープスカイのアレックス・ペトレ最高経営責任者(CEO)は、「マニトバ州南西部は地質・再エネ・人材・政策のいずれの面でも理想的であり、炭素除去産業が成功するための条件をすべて備えている」と述べた。
マニトバ州政府は2024年にCO2貯留を合法化する法律を可決しており、今秋にも詳細規制が施行される見通しだ。州の電力の大半を占める水力発電により、CO2除去技術をクリーンエネルギーで稼働できる環境が整っている。
同社は現在、建設候補地を複数評価しており、今年秋にも最終決定を下す予定。その後、貯留井戸の掘削を経て2026年の建設開始を目指す。初期フェーズでは年間3万トン規模の除去能力を持つ施設が建設され、約2億ドル(約300億円)を投じる計画だ。
さらに、同社は地域社会との連携を重視し、マニトバ州のダコタ族評議会(Dakota Grand Council)と「関係宣言書(Declaration of Relationship)」を締結した。これにより、先住民族との投資や共同開発の機会を探るとしている。ダコタ・グランド・カウンシルのレイモンド・ブラウン議長は「我々の“トカタ(未来)”に根ざした持続可能な経済発展の理念を共有するパートナーとして、ディープスカイと協働できることを誇りに思う」と述べた。
マニトバ州ビジネス・鉱業・通商・雇用創出相のジェイミー・モーゼス氏は、「このプロジェクトはマニトバ州が世界的な気候アクションのリーダーとして地位を確立する重要な一歩だ」と強調し、CO2除去産業が新たな雇用と経済成長をもたらすと述べた。
ディープスカイは、カナダ・モントリオールに拠点を置く世界初の「技術非依存型」炭素除去プロジェクト開発企業であり、直接空気回収(DAC)や海洋炭素回収など複数の技術を統合してギガトン規模の除去を目指している。アルファ施設では10種のDAC技術を同時運用し、マニトバ施設の技術選定に向けたデータを収集している。
同社はこれまでに1億3,000万ドル(約200億円)を調達しており、出資者にはブレークスルー・エナジー・カタリスト(Breakthrough Energy Catalyst)やオマーズ・ベンチャーズ(OMERS Ventures)などが名を連ねる。
カナダは世界的に見てもCDR産業の先進国として位置付けられつつあり、2050年までに年間60〜100億トンのCO2除去が必要とされる中で、同国の取り組みは国際市場形成の試金石となる。