Deep Sky、カナダ初の金融枠組みで12億円資金調達 CCUS設備の「ディープスカイ・アルファ」を強化へ

村山 大翔

村山 大翔

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モントリオール発 2025年9月16日、炭素除去(CDR)プロジェクト開発を手がけるDeep Sky(ディープスカイ)は、カナダ最大の民間貸付機関ファイナルタ・キャピタル(Finalta Capital)と提携し、画期的な資金調達を実施した。アルバータ州イニスフェイルにある同社の主力施設「ディープスカイ・アルファ」を対象に、炭素回収・利用・貯留(CCUS)設備投資を目的とした1,100万カナダドル(約12億円)の信用供与枠を確保した。カナダにおいてこの種の金融スキームが適用されるのは初めてである。

ディープスカイの最高経営責任者(CEO)アレックス・ペトレ氏は「この取引は炭素除去産業がすでに金融機関の信頼に足る存在となったことを示す。革新的な債務金融により、スケール拡大に必要な資本を解放し、カナダを気候経済の先頭に押し上げる」と述べた。

アルファ施設は世界初の「クロス技術型」CDR拠点であり、大気中からCO2を直接回収し地中へ貯留する。2025年8月には北米で初めて、直接空気回収(DAC)技術を用いたCO2の地下貯留を実現した。敷地は約5エーカーに及び、最大で10種類のDAC技術を並行稼働させ、コスト削減とスケーラビリティの最適解を探る。すでに生成するカーボンクレジットは全量が事前販売済みである。

今回の金融枠組みは、従来はアクセスが難しかった民間資本を気候インフラ分野に呼び込む突破口とされる。ファイナルタ・キャピタルの社長ピエール=リュック・ラベル氏は「われわれの使命は革新的企業に対し、還付型税額控除を基盤とした非希薄化型の流動性を提供することにある。ディープスカイとの提携は、気候分野全体にとっての節目だ。革新的な気候ソリューションが、環境的・経済的リターンを同時に生み出す投資対象になり得ることを証明した」と強調した。

ディープスカイはこれまでに1億3,000万カナダドル(約140億円)を調達しており、ブレークスルー・エナジー・カタリストやオマーズ・ベンチャーズなどの世界的投資家に支援されている。今回の資金調達により、同社はギガトン規模のCDR事業の実現に向けた加速を図る。

カナダ政府はCCUS分野における技術革新を国家戦略に位置づけており、今回の事例は制度的支援と民間金融の橋渡しを象徴する動きといえる。

参考:https://www.deepskyclimate.com/blog/deep-sky-secures-first-of-its-kind-financing-with-finalta-capital-to-advance-carbon-removal-in-canada